★今日から8月。夏本番です。東京でも蝉が鳴いています。みなさまは夏休みをどのように過ごされますか?今年は7月上旬から既に猛烈な暑さでしたが、まだ向こう1ヵ月位は暑さが続くのでしょうね。勝手なもので、この暑い夏も冬になると懐かしく思えたりしますよね。水分補給や睡眠をしっかりとるなどしながら今年の夏を満喫したいと思います。
★コンテッサ(Contessa)はイタリア語で伯爵夫人を意味し、1961年(昭和36年)から1967年(昭和42年)の僅か6年間に2世代が相次いで製造販売された日野自動車のリアエンジン・リアドライブの乗用車。2世代目のミケロッティ・デザインのコンテッサ1300クーペについては本シリーズ40回目(2012/8/18)、市販されずに終わった同じくミケロッティ・デザインのコンテッサ900スプリントについては本シリーズ33回目(2012/8/3)で既にご紹介しているので、そちらをご参照いただくとして、今回は1961年3月(発売は4月1日)に初めて世に出たコンテッサ900のご紹介。
★コンテッサは本シリーズ153回目(2013/7/13)でご紹介した日野ルノーのノックダウウン~ライセンス生産で学び得た技術を基に1960年代に日野自動車が自社開発により製造販売していた、現在に至るまで日野唯一のオリジナル乗用車である。
コンテッサの初代に当る日野コンテッサ900は、1961年(昭和36年)4月1日に排気量893cc出力35pエンジンをそれまでの日野ルノー4CV同様リアに搭載して発売された。モノコック構造、全輪コイルによる独立懸架、4気筒水冷リアエンジンという基本的なレイアウトをルノー4CVより踏襲してはいたが、戦後間もないデビューから年月を経て旧態化していた4CVに比べ大幅に近代化された4ドア5座の日野自社デザインのボディを始め、各部がリファインされて登場した。丸2灯ヘッドライトとリアエンジンによるグリルレスのシンプルなフロントの表情、ラジエターへの空気導入孔である左右リアドア直後のサイド・エアインテーク、テールフィンとその先端に付いた蝋燭型テールライト、ルノー・フロリードとも似たリアグリルの表情などに独特の個性を放ったクルマとして登場した。デザイン上、窓面積が飛躍的に広がったことで、ルーミーで明るく広い室内は4CVより遥かに居住性の高いものとなった。
コンテッサ900は仏本国でルノー4CVの後継車であったルノー・ドーフィンよりもエンジン排気量は大きいもののボディサイズは若干小さく、両車のプラットホームは同一との文献も見かけるが、ホイールベースはドーフィン2267㎜に対しコンテッサは2150㎜であり全くの別物であった。1956年デビューの丸味を帯びたドーフィンよりデビューが5年遅いコンテッサの方が直線的でスマートな新しいデザインであったといえる。ただ、両車共にルノー4CVの後継車種として世に出たRR車であることと、ドーフィン(Dauphine)は王太子妃の意味を持つ車名であり、コンテッサ(Contessa)は伯爵夫人の意味を持つ車名であったことから両車は謂わば血縁はあったとも言えるだろう。
★コンテッサ900の駆動方式や全輪独立サスペンションなどの基本的なレイアウトは前述の通り従来の日野ルノー4CVを踏襲し、エンジン自体も4CVのものを一回り大きくしたようなものであったが、コンテッサではリアサスにラジアスアームを採用してアクスルの安定性を向上させ当時の日本の悪路に対応したほか、特筆すべき技術的特徴として、機構が複雑となることから通常はフロアシフトとなるリアエンジン車でありながらシフトリンケージの工夫によりコラムシフトを実現し、オプションとして電磁式自動クラッチ「シンコーヒノマチック」(4万円)が用意されていた点が挙げられる。ヒノマチックは1967年(昭和42年)にポルシェが911に採用したスポルトマチックとも似た機構の非常に使いやすいセミオートマであった。
★コンテッサ900は、デビューの翌年1962年(昭和37年)7月にマイナーチェンジを受けフロントターンシグナルをボディ・サイドまで廻り込ませて視認性を向上、翌1963年(昭和38年)5月にはタクシー用LPG車を追加発売した。また同年1963年5月の第1回日本グランプリに参戦し排気量700~1000ccクラスで優勝するなど好成績を残した。この日本グランプリ仕様の生産モデルが1963年11月に4速フロアシフト・40psエンジン搭載の「コンテッサ900S」(S=Sporty&Speedy&Specialの意味)として追加発売された。その後、翌1964年(昭和39年)1月には全車が40psエンジンとなった。同1964年9月にはミケロッティ・デザインによる2代目コンテッサ1300がデビューするが、コンテッサ900のデビューから僅か3年5ヵ月後のことであり、コンテッサ900も1965年(昭和40年)1月まで暫くは並行生産された。神風タクシーの異名をもった日野ルノーの業界でのシェアを受け継ぎコンテッサ900は当初からタクシーとしても全国で使用された。
★コンテッサ900と言うと、1960年代半ば、私が幼稚園から小学生低学年の頃に近所にコンテッサ900に乗っている同級生の女の子の家があったことを思い出す。
何でもお父さんは銀行に勤めていると聞いた。スバル360を買うのがやっとだった私の家とは収入が違ったことだろう。当時、私が育った町には夏は冷たく冬は暖かい水の出る井戸があり、路地の奥に井戸の大きな給水タンクがあった。そのタンクの横にその子の家があって、そこにコンテッサ900がいつもチョコンと前を向いて停めてあった。写真1枚残っておらず私の記憶の中にだけ残っていることだけれど、何だかひどく懐かしい。コンテッサ900と言うとその同級生の女の子の顔も思い出してしまう。
★最後にモーターマガジン1961年5月号に掲載された小林彰太郎氏(1929-)によるコンテッサ900のロードテスト記事に以下のような趣旨が書かれているので掲載したい。記事の出た1961年というと1962年に小林氏が日本を代表する自動車雑誌「カーグラフィック」を創刊する前年のことである。
「コンテッサ900はルノー4CVを基礎としながら、性能・居住性すべての点でルノーに勝る軽量かつ軽快な4/5人乗りサルーンである。同クラス他車を凌ぐ80Km/hまで約15秒の鋭い加速、殆どすべての路面での適当な乗り心地、何よりスポーツカー的な操縦を可能にする総合的にバランスのとれたエンジン、サスペンション、ステアリングによる優れた走行性能を持つ好ましい印象のクルマである。」
【主要スペック】 1961年 日野コンテッサ900デラックス (PC10型)
全長3795㎜・全幅1475㎜・全高1415㎜・ホイールベース2150㎜・車重750kg・GP20型4サイクル4気筒水冷OHVエンジン・最高出力35ps/5000rpm・最大トルク6.5kgm/3200rpm・変速機コラム3速・ラック&ピニオンステアリング・乗車定員5名・ボディカラー7色・燃費20km/L・最高速110km/h・販売価格65万5000円
●1961年3月 日野コンテッサ900 海外向けカタログ (B5判・英文8頁)
魅力的なイラストの表紙。カタログの輸出対象国は不明。中頁は国内向け簡易カタログの言語替え。
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●1961年3月 日野コンテッサ900 リーフレット(B5判・両面1枚)
表面デラックス
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裏面スタンダード
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●1961年3月 日野コンテッサ900 簡易カタログ (B5判・8頁)
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●1961年3月 日野コンテッサ900 本カタログ (A4判・24頁)
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中頁から
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スタンダードはサイドモールが後ろ半分のみ
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デラックスには右側のみフェンダーミラーが付く
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コラムシフト
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スペック掲載頁
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●1962年7月 日野コンテッサ900 本カタログ (A4判・20頁)
フロントのターンシグナルをボディ左右まで廻り込んだ視認性の良いものに変更
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中頁から
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スペアタイヤはフロント先端にラゲッジスペースと分けて入れる形となっており使い勝手が良い
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●1963年4月 日野コンテッサ900簡易カタログ (縦13×横24cm・8頁)
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中頁から
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●1963年11月 日野コンテッサ900S 専用カタログ (縦23×横26cm・12頁)
40psの高性能版「S」
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中頁から
外観上、「S」にはフォグランプが付く
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「S」はフロアシフト
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●1964年1月 日野コンテッサ900 本カタログ (縦23×横26cm・22頁)
893ccのまま全グレードの出力を35psから40psにアップ
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中頁から
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●1964年2月 日野オートローン パンフレット (B5判・両面1枚)
日野自動車販売が1963年8月10日より始めたローン販売のパンフレット。無担保で融資と記載されているが、全くの無審査でローンが組めたのだろうか。
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●1964年5月 日野コンテッサ900S 専用カタログ (縦23×横26cm・12頁)
1963年11月発行の「S」専用カタログの改訂版。表紙以外は若干のレイアウト変更等のみで内容は殆ど変わらない。
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★オマケ(その1): 大盛屋1/40スケール 1961年 日野コンテッサ900デラックス
1962年4月発売。当時定価270円。大盛屋チェリカフェニックスシリーズの第1号車(品番PHE-1)。アンチモニー製。全長9.5cm。フロントターンシグナルがボディ左右に廻り込みオーバーライダーも付いた1962年のマイナー後のモデルも発売された。また、前身の大盛屋フリクションシリーズ同様にフリクションを内蔵したモデルも確認されている。
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★オマケ(その2): 一宏(イチコー)1/16スケール 1961年 日野コンテッサ900
1961年暮頃発売。当時定価:都内230円・地方最低小売250円。イチコー製品番号6362。全長約23cm。サイドモールがボディ後ろ半分だけの実車のスタンダード仕様とサイド全体に付いたデラックス仕様のバリエーションあり(どちらが初版か不明)。なお、デビュー当初、右側フェンダーミラーが付くのはデラックスのみでスタンダードではオプションだった。
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リアナンバー5111は61年本カタログの車両と同じ
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イチコー1963年版カタログより「コンテッサ東京駅構内タクシー」
このタクシーの試作品は現存しているが、一般に市販された形跡はなく恐らく未発売に終わった東京駅構内タクシー仕様。ルーフの行先表示が回転し東京・新宿・池袋・渋谷・上野等と表示が変わる凝ったギミック付。凝ったギミックにコストがかかり過ぎて市販が見送られたのかもしれない。
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★オマケ(その3): コンテッサ900実車動画
短い動画ですが、レーシーな日野コンテッサ900が魅力的です。
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★1961年 日野コンテッサ900 最初の伯爵夫人 ~ 自動車カタログ棚から 160
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