★オペル(OPEL)は19世紀末からの長い歴史を持つドイツの自動車メーカー。1929年(昭和4年)にはGM資本となり、日本でも戦前から日本GMが販売していた馴染み深いメーカー。戦後は東邦モータースが日本での輸入代理店となりオペル車の販売を行った。
★1965年(昭和40年)秋のフランクフルト・モーターショー(IAA)にオペルのプロトタイプGT「グランツーリスモ・クーペ」がデビューしたが、オペルの広報は「このクルマは純粋にスタイリングの研究を目的とし、定評のあるオペル・カデットをベースに何が造れるかを実証しただけのもの」という市販については否定的なものだった。ところが、マーケット、ディーラー、マスコミの反響はすこぶる良く、ショーから3年後の1968年(昭和43年)9月に「オペルGT」として市販に移された。ショーモデルの伸びやかな前後オーバーハングは短縮され市販するに当っての現実的な手直しが加えられたが、ミニ・コルベット的なクーペボディは充分に魅力的なものだった。
モノコックボディは西独では造られず、フランスのコーチビルダー「ブリッソノー&ロッツ」で架装された。当初のパワーユニットはオペル・カデット用のOHV1100cc60psとSOHC1900cc90psの2種で、車重が軽く空気抵抗が少ないボディのため、最高速は1100で155km/h、1900では185km/hと同じユニットを載せたカデット・ラリーを遥かに凌ぐ性能であった。
★オペルGTは発売と同時に熱狂的な支持を受け特に北米でヒットしたが、絶対的にアンダーパワーな1100は僅か3573台しか売れずに1970年(昭和45年)に生産が中止され1900に一本化された。販売開始から丸5年を経た1973年(昭和48年)8月で生産中止となるが、それまでの累計生産台数は10万3463台であった。そのうち、7万222台はアメリカに輸出された。生産中止は販売の中心であったアメリカの安全規制・環境対策法規が厳しくなったことによるもので、特にバンパー位置を8cmも高くしなければ法規をクリア出来ないことがネックとなった。
オペルの長い歴史の中で戦前1930年代初頭にスポーティーなロードスターがカタログに載ったことはあったが、GTクーペを生産したのはこのオペルGTが初めてであった。
オペルとしては当初から例えばポルシェに対抗するようなスポーツカーを目指したのではなく、むしろ運転し易く経済的なスポーティームードのスペシャリティーカーといったポジショニングを狙ったクルマではあったが、最高速185kmの性能とインパクトのあるスタイリングは充分に魅力的なスポーツクーペだったといえる。
★1976年(昭和51年)、私は高校生の時にアルバイト先で初めてオペルGTを見た。
バイト先の当時30代位だった社員の人が何とオペルGTで通勤していて会社の駐車場にいつも停めてあった。ある時、その人と午前0時過ぎにバイト先近くのスナックに鍋焼きうどんの夜食を食べにいった帰りに(深夜のバイトだった)、一度だけオペルGTに乗せてもらった。まだ私は免許を持っていなかったので、短距離を助手席に乗せてもらっただけなのだが、物凄く低くて流麗な2人乗りのコンパクトなボディに胸がキュンとなったことを昨日のことのように思い出す。初代サバンナRX-7がデビューする前のことだったので、リトラクタブル・ヘッドライトにもすっかりトキめいてしまった。トヨタ2000GTとほぼ同価格帯だったオペルGTを持っていたということは、私は内情を何も知らなかったのだけれど、あの社員の人は会社でも結構偉い人だったのかなと今になって思う。
当時、トヨタ2000GTの価格が238万円だったのに対し、オペルGTの当初の輸入価格は当初235万円、すぐ239万円に上がりトヨタ2000GTよりも1万円高いという高額車だった。しかし、今もし同じ値段でこの2台が売られていたとしたら文句なしにトヨタ2000GTを買うだろう。
【主要スペック】 1969年 オペルGT1900
全長4115mm・全幅1580mm・全高1250mm・ホイールベース2430mm・車重920kg・FR・水冷直列4気筒SOHC1897cc・最高出力90ps/5100rpm・最大トルク14.9kgm/2500rpm・変速機4速MT・前ディスク/後ドラム・乗車定員2名・東邦モータース販売価格:東京渡し235万円(オプション:電動ヘッドライト3万円・オートマ14万円)
●CARグラフィック 1969年2月号(通巻86号)
表紙は日本に入荷したばかりのオペルGT。中頁にも7頁に亘るニューモデルとしての解説記事。
●1969年発行? オペル・オールズモビル総合カタログ(A4判・日本語3つ折)
東邦モーターズ発行の日本語総合カタログの表紙はオペルGT
中頁から
●1969年発行? オペルGT カタログ(縦16.5×横21.5cm・日本語3つ折)
東邦モーターズ発行の日本語版だが、更に分厚い日本語の本カタログが発行されているのかどうか不明
中頁から
裏面スペック
●1969年10月発行 オペルGT 本カタログ(縦23.5×横23.5cm・英文12頁)
北米GM発行。北米ではビュイックス・オペルGTとビュイック・ブランドの1台として売られた。
表紙はライトを閉じた状態、裏表紙は開けた状態
中頁から
透視図を見るとスペアタイヤがシート背後にあり、リアには開口部がないのでタイヤはドアから出し入れ?
●1971年1月発行 オペルGT 本カタログ(縦24×横30cm・英文16頁+スペックシート1枚)
表紙は四面図、中頁は妙にアーティスティックな写真が多用された個性的なカタログ
中頁から
ダッシュボード
●1972年7月発行 オペルGT 本カタログ(縦24×横30cm・英文8頁+スペックシート1枚)
中頁から
エンジン
★オマケ(その1): オペルGT オフィシャル動画
★オマケ(その2): 仏ディンキー 1/43スケール オペルGT1900
国内定価:調査中。仏DINKY TOYS 品番1421。ボンネット、ドア開閉アクション付。
★オマケ(その3): 仏ソリッド1/43スケール オペルGT
国内定価900円。仏Solido 品番171。ヘッドライト回転・ドア開閉アクション付。
リトラクタブル・ヘッドライトを開けた状態
★オマケ(その4): 独シク 1/60スケール オペルGT
国内定価250円。西独Siku 品番1018。ドア開閉アクション付。
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★1969年 オペルGT 欧州製ミニコルベット ~ 自動車カタログ棚から 159
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