★4月に入ってそろそろ1週間。東京では桜はもう殆ど葉桜となっています。ここのところ寒暖の変化が大きく昨日まではかなり寒かったのが今日は最高気温が23度で半袖でも過ごせるくらいの陽気でしたが明日は10度以上も気温が下がりまた一気に冬に戻るようです。あまりにも気温の変化が大きいと服装の調節も大変です。気温の大きな変化で体調を崩さないようにしたいものです。
★週末最低1回更新を目標にしていますが、この週末はバンドの練習などもあってどうしても纏まった時間が取れず土日のうちにアップ出来ませんでした。来週もバンドの練習があり記事のアップは難しいかもしれません。仕事をしつつピアノやギターを弾く時間を確保して、更にブログ記事をつくるというのは結構大変です。私は根が欲深なのか、あれもこれもやりたいという情熱が強くて、為せば成る式に何とかしているような感じです。本当はもっとユッタリンコ、ゆるゆるの人生がいいなと思うのですが。
★予定より1日遅くなってしまいましたが、今日は自動車カタログ棚シリーズの261回記事として日本のタンクローリーをピックアップします。前回ピックアップしたポルシェのようなクルマは勿論魅力的ですが、トラックやバスといった働くクルマも魅力的なものです。
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★日本のガソリンスタンドは2014年(平成26年)3月末現在34706店、うちセルフ方式が1/4を超える 9275店。スタンド数はピーク時の1994年(平成6年)時点には全国で60000店を超えていたというから、この20年で4割以上も減ったことになる。
ガソリンスタンド数減少の背景には石油販売業の収益性の低さと共に自動車の燃費向上と走行距離減少によるガソリン需要の減少、新法規に伴う地下貯蔵庫改修費用の捻出が困難であることなどが挙げられ、ついこの前までスタンドだった場所がファミレスやコンビニに建て変わっていたといったケースは多い。
★危険物に当るガソリンを取扱うガソリンスタンドは建造物に高度の耐震性を求められるため、2011年(平成23年)の東日本大震災でも水没したケースを除けば大きな被害を受けず震災後のインフラ確保の手助けともなった。
将来、電気自動車が大半となった時代が到来すればガソリンスタンドが絶滅することも考えられるが、2015年現在においてはガソリンやディーゼルの需要は依然として大きいためスタンド数が極端に減少することは社会的な問題ともなり得る。
★日本でガソリンスタンドが最初に出来たのは、1919年(大正8年)2月の日本石油のものであったという。
しかし、それより前からガソリン自動車は梁瀬などが輸入を始めているので、日本の初期の自動車オーナーは石油会社(原油元売り)から直接ガソリンを購入していたということになる。
では、石油会社からガソリンスタンドまでガソリンを運搬する「タンクローリー」は日本でいつ走り始めたのか。
当然、ガソリンスタンドが1919年に出来た時に何らかの方法で元売りから運搬されたであろうから、その時に初めてタンクローリーが使用されたのかもしれないが最初は荷車にガソリンを積んで人力で曳いて運んだという可能性もある。
昭和シェル石油のHPによれば、シェルの前身であるライジングサン石油が関東大震災の翌年1924年(大正13年)に英国より初めてタンクローリーを輸入したという。何れにしても1919年に日本初のガソリンスタンドが出来て間もなくタンクローリーによるガソリンの輸送が始まったことは間違いないだろう。
(注)鉄道用ガソリン等運搬用タンク貨車の歴史は自動車の世界のタンクローリー以上に詳細な歴史研究がされている。
★1960年代、私が子供の頃のタンクローリーと言うと、クルマの後ろにガソリン爆発を防止するため静電気を逃す鎖がぶら下がっていたことが一番に思い出される。
家族でドライブに行った折など前に鎖を付けたタンクローリーが走っていたりするとワクワクしたもの。
ガソリンスタンドから家庭まで灯油等の小口運搬用の車両を除けばタンクローリーは大抵大型車である。そのため、タンクローリーを運転するにはまずは大型免許(総重量750kg以上を牽引するトレーラー車であれば更に牽引免許)、そしてガソリン、灯油、軽油、重油などを取り扱う 乙種第四類危険物取扱者の国家試験に合格していないと車両を走行させることは出来ない。
なお、日本の法規上(消防法上)では、ガソリン、LPガス等の危険物を輸送するタンクローリーのことを「移動タンク貯蔵所」という。
今回は1960年代のタンクローリー専用カタログを中心に戦前から戦後1960年代までの日本のタンクローリーを駆け足で振り返ることとします。タンクローリーはミニカー/玩具としても沢山のモデルが出されています。今回のオマケでは1970年代のトミカダンディの日野HEを含めて国内外のモデルを厳選して掲載します。
【主要スペック】 1966年いすゞTXD50-T タンクローリー (1966 ISUZU TXD50-T tanker truck)
全長7430mm・全幅2320mm・全高2500mm・ホイールベース4400mm・FR・DA120型ディーゼル水冷4サイクル直列6気筒6126cc・最高出力125ps/2600rpm・最大トルク39.5kgm/1400rpm・変速機4速MT・乗車定員3名・最大積載量7000ℓ(5250kg)・最小回転半径8300mm・燃費6.5km/ℓ・最高速度88km/h・販売価格:不明(仕様により異なる)
●1937年 ニッサン80型タンクローリー
日産自動車広報誌「ニッサングラフ」1938年3月号より。戦前、日本で組立てられていたシボレー、フォードのトラックにもガソリンタンクローリーは存在したが、これは国産のタンクローリーとしては極く初期の車両と思われる(もっともニッサン80型もアメリカのグラハム・ペイジの生産設備を譲り受けて生産されたクルマであったが)。タンク部には片仮名で「ガソリン」、ドアには三菱のマークが入っている。(ニッサン80型トラックについては自動車カタログ棚シリーズ第84回記事をご参照ください)
●1959年ニッサンディーゼルGU582型タンクローリー「出光」
日産ミンセイ広報誌「ディーゼル・ニュース」1959年8月号より。当時、東京江東区内で保有車両100台以上を誇った江東運送の出光興産タンクローリー。実働中の写真は何とも迫力がある。出光の横顔のマークは子供の頃は怖かったことを思い出す。
街道を4台の出光アポロ・タンクローリーが走行する迫力の1枚
●1961年ニッサンディーゼルT80タンクローリー「東京急行電鉄」
日産ミンセイ広報誌「ディーゼル・ニュース」1961年5月号より。東急バス車庫へのガソリン輸送用だろうか。
●1961年ニッサンディーゼルUG680タンクローリー「日本石油/CALTEX」
日産ミンセイ広報誌「ディーゼル・ニュース」1961年5月号より。1888年(明治21年)創業という石油元売りの老舗・日本石油は戦後1951年にアメリカのカルテックス(現シェブロン)と業務提携した。
●1953年 いすゞTX61/TX80タンクローリー
1953年AUTOMOBILES(オートモビルス:第1回東京モーターショーが1954年に開催される以前より日本自動車輸出協会より出されていた輸出向け英文国産自動車年鑑)より。タンク・キャパシティー1200ガロン。
●1953年 三菱ふそうT31タンクローリー「三菱石油」
1953年AUTOMOBILESより。タンクキャパシティー8000リッター。
●1953年 日野TH11散水車
1953年AUTOMOBILESより。タンクローリーというとガソリン運搬車を連想するが、広義のタンクローリー(=タンクトラック)には幹線道路でさえ未舗装が多かった1960年代まで砂塵防止の為に全国各地で使用された散水車(スプリンクラー車)も含まれ当時の児童向け乗物絵本にはタンクローリー以上によく登場する。
●1955年? 日野TH 散水車「東京都清掃事業部」
小学館「幼稚園」1956年4月号付録「絵本じどうしゃ」より。この時代はまだ人工着色であってもカラー写真は少なく色味の判る貴重な1枚。東京都清掃事業部はその後の東京都清掃局の前身。背景に見える都電は緑系の旧カラー。
●1960年 三菱ジュピター・タンクローリー「SHELL」
ひかりのくに絵本「のりもの」より。画家不詳。ジュピターは1959年7月にデビューした中型ボンネット・トラック。まだプロペラ機がメインだった時代の羽田空港がジュピターを主役に抜群の構図で描かれている。
●1960年 いすゞTXタンクローリー
フレーベル館トッパンの愛児えほん「はたらくじどうしゃ」より。絵:中島章作 画伯。特定の石油会社の宣伝とならないようにとの配慮からかタンクローリーにもガソリンスタンドにも単に「GASOLINE」と書かれているが、タンクローリーの黄色はシェルを連想させる。この1959年にフルモデルチェンジしたいすゞTXのタンクローリーはトミーテックのNゲージスケールモデル「トラック・コレクション」から四駆タイプのTXDと共にリリースされている模様(現物は未入手)。
●1966年8月 いすゞタンクローリー 専用カタログ (A4判・3つ折6面)
いすゞカタログNo.LT-3011。表紙は石油元売り会社ロゴなしのTXD50-T型。掲載車種はTXD-50/40/30/20、TD70他計7種。
【中面から】
TXD50型
図面(TXD50型)
TD70型・・・50型より一回り大きいボディにDH100型190psディーゼルエンジン搭載
図面(TD70型)
裏面スペック
●1969年7月 いすゞタンクローリー専用カタログ (A4横判・12頁)
いすゞカタログNo.LT-2024。表紙は新型キャブオーバーTD-E型タンクローリー。これも石油元売り会社ロゴはなし。このカタログには2000ℓ積の2代目エルフTLD/TLG12型から前2軸のキャブオーバーTG-E型まで計12車種18型式を掲載。
【中面から】
エルフ・タンクローリー
ムーミンのような顔をしたTY型タンクローリー
TX型タンクローリー
70年代には主流となったキャブオーバーTX-E型タンクローリー
TD型タンクローリー
後ろ2軸のキャブオーバーTP-E型タンクローリー
前2軸のキャブオーバーTG-E型タンクローリー
●1965年? 三菱ふそう大型タンクトラック専用カタログ (A4判・4つ折8面+仕様書A4判2つ折4面)
三菱カタログNo.00505。ドラム缶の山の裏からヌゥ~と顔を出した恐竜のような風情の三菱石油T410タンクローリーの表紙写真が秀逸。ガソリン・タンクトラック、重油タンクトラック、タンク部が真円形のプロパン・タンクトラックの3種に分けて計5車種9型式を掲載。プロパン積載用として全長12.9mのT350-S型セミトレーラー車も掲載。中型のジュピターは掲載されていない。
【中面から】
ガソリン・タンクトラック(T410D型・T335型・T330型)
プロパン・タンクトラック (T330型・T390型・T350-S型セミトレーラー)
重油タンクトラック (T390型)
★オマケ(その1): デンマークLEGO(レゴ) 1/87スケール メルセデスベンツ・トレーラータンクローリー「SHELL」&「ESSO」
全長14.5cm。1965年発売?当時定価:不明。硬質プラ製(タイヤのみ金属製)。1966年(昭和41年)、小1だった私は新宿小田急デパートで「SHELL」タンクローリーを含むトラックばかりのレゴ8台セット(トラック4台、トレーラー4台)を買ってもらったのだが、東京玩具商報1966年7月号のレゴ輸入元「朝日通商」の広告にそのセットは品番No.699・価格1800円として掲載されているので、単品売りはトレーラー300円、トラック150円前後だったのではないだろうか。プラ製ながら子供が遊んで約50年の時を経ても尚壊れることなく残っている頑丈な製品。
東京玩具商報1966年7月号「朝日通商レゴ・ミニカー広告」
品番698「VWタイプ2等12台セット」1400円、品番699「メルセデス・トラック8台セット」1800円、品番696「VWビートル等乗用車6台セット」800円。
1966年8月31日、ビートルズが来日した年の夏休み最後の日。私は小1だった。まだ6歳の私の前にはレゴブロックで造った家とレゴのこの「SHELL」タンクローリーやVWタイプ2ピックアップが写っている。
★オマケ(その2): トミカ ダンディ052番 1/60スケール 日野HE355牽引セミトレーラータンクローリー「Shell」&「日本石油」
全長22cm。当時定価:1350円~1500円。トラクタ:ダイキャスト、タンク部プラ製。Shell、日本石油以外にキグナス、エッソ、テキサコと原油元売り会社違いが5種類ある上、生産時期による色違いなどバリエーションが多数あり、1970年代から80年代にかけて市販されたダンディは意外に集めにくい。近年、トミカリミテッドヴィンテージ・ネオシリーズで日野カートランスポーターが往年のダンディとは年式違いでリリースされているが、同じトラクタを利用したオールダイキャストのタンクローリーの製品化も期待したい。
1970年代後半のトミカラマ「Shell ガソリンスタンド」とのジオラマ。建物上のShellの看板の点灯ギミック付。35年以上の時を経ても正常に点燈する。70年代のトミカラマは近年のトミカタウンよりも遥かにスケール感があり、現在のトミカリミテッドヴィンテージ「ガソリンスタンド」の作風に近いものがある。給油中の白いクルマは2代目シルビア、洗車中の空色のクルマはポルシェ911S、カードック(ガレージ)前の黒いクルマはポルシェ930ターボ(全てトミカ)。ジオラマで遊ぶことは大人になっても楽しいもの。
★オマケ(その3): 英マッチボックス K-16番 1/62スケール 1973年フォードLTSタンクローリー「Shell」
全長22cm。当時定価:1200円。トラクタ:ダイキャスト、タンク上部プラ製。この1970年代のマッチボックス・キングサイズのタンクローリーも上掲のトミカダンディ同様にコレクター泣かせの原油元売り会社違いのバリエーションが多く、マッチボックス1978年版カタログによればShell以外に「Aral」「Texaco」「Exxon」「Total」の計5種類が出ている。赤いクルマは同じマッチボックスのポルシェ930ターボ。オマケ5の「激突」のようなシチュエーションでも930ターボなら逃げ切れるかも。
K-16タンクローリー5種類のバリエーション(マッチボックス1978年版カタログより)。当時の店頭ではシェルとテキサコしか見かけなかったので全種類は日本に入っていないのでは。
★オマケ(その4): サンキョウ 1/30スケール程度 車種不明タンクローリー「Mobilgas」
全長30.5cm。当時定価:不明。ブリキ製。マルサン商店倒産後に金型を引き継いで売られた製品。プラモデルで有名な三共とは全く別会社のようだ。マルサン時代の品番114、定価は全国330円だった製品。左ハンドルで車種不明ながら前後に矢印式方向指示器がプリントされているのが味わい深い。左後部下のハンドルを廻すと後部の給油ホースが引出しと巻き戻しするギミック付。
★オマケ(その5): 1971年 米映画 「激突」 (原題:Duel)
タンクローリーと言えばこの映画でしょう。運転手も見えない巨大なトレーラータンクローリーに平凡なプリムスに乗ったドライバーが執拗に追われる恐怖を描いたスティーヴン・スピルバーグ無名時代の傑作。これは要所を繋ぎ合わせ別の音楽を被せたダイジェスト版。
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★1960年代いすゞ・三菱タンクローリー/タンクローリーの歴史 ~ 自動車カタログ棚から 261
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