★国産初のダイキャストミニカー「モデルペット」や1962年クライスラーインペリアルの金属玩具(ブリキモデル)で有名なアサヒ玩具の歴史は古く、手元にある1960年代の年次製品カタログ中の記載によれば1931年(昭和6年)に「岸玩具」の名称で創業したとある。
その後、戦後1948年(昭和23年)に「株式会社 旭玩具製作所」に改称、更に1963年(昭和38年)には「株式会社アサヒ玩具」に再度改称した。1950~1960年代にかけては自動車を中心とする金属製玩具(ブリキ)の製品を多数リリース、1969年(昭和44年)に女子児童向けのママレンジ、1971年(昭和46年)にはアメリカン・クラッカーがヒットした後、1973年にはモデルペットの生産を中止、1982年(昭和57年)に惜しくも倒産し玩具業界から姿を消した。なお、アサヒ玩具の創業年についてネット上に1937年(昭和12年)とした情報がありますが、手元にあるアサヒ玩具のカタログには創業は1931年と記載されています。
モデルペットの自社製造販売の開始に引き続いて、アサヒは1960年代初頭に英コーギー、仏ソリド、伊マーキュリー等のミニカーや米AMT、米モノグラムのプラモデルの輸入代理店ともなり、優れた海外製品の輸入販売も行った。
アサヒ玩具倒産後、1980年代半ばに多数の1960年代のアサヒの年次製品カタログが下北沢のアンティークトイ・ショップの店頭で売られていたことがあり(但しその時の価格は1冊3~4万円とおいそれとは手が出ない高額なものでした)、また、その後もオークション等に纏めて出てきたりとアサヒのカタログは何故か他の玩具メーカーのものに比べると割合現存している印象があります。今回は手許にあるアサヒのカタログの中では一番古い1962年版をご紹介します。
●1959年10月 旭玩具製作所 本社新築完成の御案内
国立国会図書館所蔵「東京玩具商報1959年10月号」より。1959年8月の地上4階地下1階の冷暖房装置完備の最新式ビルが完成した際の広告。新築のビルには業務の中心であった輸出部が入り、住居を兼ねていたと思われる2棟を挟んで小さな商店のような内地部の建物が並んでいる。右から2つ目の建物1階のガレージの納まっているのは社用車だろうか、当時最新の1959年式トヨペットクラウンRS20系に見える。大手自動車メーカーなどに比べると玩具業界大手のアサヒといえども小さな会社だったことがよく判る1枚。
●1959年11月 モデルペット発売のお知らせ
国立国会図書館所蔵「東京玩具商報1959年11月号」より。「国産自動車を各自動車会社の御協賛のもとに30種程、生産計画し12月初旬より取り敢えず3点発表することになりました」と記載があり、モデルペットの発売時期を1959年10月とした故・中島登氏の著書の記載より発売時期が2ヵ月遅い。この広告の記載の通りとするとモデルペットの発売は1959年12月初めということになる。最下段のマツダ三輪トラックは残念ながら未発売に終わっている。
●1962年 旭玩具製作所 総合カタログ (A4横判・24頁+)
1960年代のアサヒのカタログはA4横判で上質厚紙を使用が基本フォーマットで同時期の他社のカタログよりも豪華。1963年に「アサヒ玩具」に社名変更する直前の旭玩具製作所時代の最後のカタログ。お伽の国をイメージしたようなメルヘン調ながらもダークグリーンを基調とした落ち着いた渋い表紙。例によって全頁の掲載は困難なため個人的な視点から抜粋して掲載いたします。価格は全国売価で都内価格は1割程度安かったものと思われます。
【中頁から】
扉頁の社名住所等記載箇所: 代表取締役は岸 淑浩、住所は台東区浅草暗め3丁目22番地、取引銀行は第一銀行ならびに東京銀行とある。
扉頁: 英文名称のASAHI TOY CO.,LTD.は1963年にアサヒ玩具に社名変更後も変わらなかった。
モデルペット: 1962年初夏にシート付S品番が出る前の初期のラインナップが勢揃い。既にNo.1の1959年クラウンのマイチェン製品であるNo.12の1961年クラウンが掲載されているが、No.1もラインナップには残っている。
◎室内シートにモケットが貼られたプロポーションの良いスポーツカーのラインナップ
・品番3562 MGA セダン 全長24.2cm (300円)
・品番3574 MGAオープン 全長24.2cm (270円)
・品番3573 フォルクスワーゲン・カルマンギア・クーペ 全長24.2cm (250円)
・品番3583 ルノーフロリード・セダン 全長24.2cm (240円)
・品番3557 ルノーフロリード 全長23.5cm (300円)・・・品番3583のバリエーションにも関わらずサイズが異なり価格が60円も違うのは印字ミス?
・品番3575 フェラーリ250GT 全長24.2cm (250円)
◎国産車各種
・品番3421 1961年トヨペットクラウンデラックス 全長24.3cm (240円)・・・モデルペット同様に1959年クラウンをマイチェンして売られた製品。
・品番3577 1961年クラウン警視庁パトロールカー 全長24.3cm (240円)・・・カタログには数年間掲載されていたにも関わらず何故か現存の少ない製品。
・品番3561 トヨペットコロナライン 全長22cm (240円)
・品番3569 マツダR360クーペ 全長15.3cm (100円)
・品番3555 トヨペットニューコロナ 全長22.5cm (220円)
・品番3587 ニッサンセドリックライトバン 全長26.7cm (270円)
マツダR360クーペのアップ
・品番3384 1959年シボレー 21.5cm (150円)
・品番3567 1959年シボレータクシー 21.5cm (150円)
・品番3560 1959年シボレーハイウェイパトロール 21.5cm (150円)
・品番3588 トヨタパブリカ 18.5cm (130円)
・品番3188 1958年オールズモビル2ドアHT 33cm (360円)
・品番3564 1958年オールズモビル2ドアHTハイウェイパトロール 33cm (360円)
・品番3534 1960年シボレーベルエア4ドアステーションワゴン 全長25.5cm (160円)
・品番3186 1958年フォードフェアレーン・ステーションワゴン 全長36cm (360円)
・品番3463 1958年フォードフェアレーン・ステーションワゴン「赤十字」 全長36cm (360円)
・品番3444 1959年スバル360 全長15.5cm (100円)
・品番3187 1958年ビュイック・センチュリー2ドアHT 全長35cm (730円)・・・アサヒの傑作の1台
スバル360のアップ
・品番3439 1959年シボレー・ボートトレーラーセット 44cm (300円)
・品番3553 シボレーカートランスポーター 33.2cm (360円)
・品番2557 モーターキャリアー 40cm (470円)
・品番3467 ハイウェイパトロール・ジープ 18cm (110円)
・品番3160 幌付ジープ 18cm (120円)
・品番3552 ディフェンス・パトロールジープ 28cm (360円)
◎トラック各種
・品番3590 シボレー特大ダンプトラック 40cm (この年のカタログでは価格未記載だが、1963年版カタログでは880円)
・品番3182 ダンプトラック 全長21cm (120円)・・・障害物に当たると荷台が自動的に上昇するギミック付
・品番3557 1959年トヨエース 全長22.8cm (240円)・・・実車通りにキャブが前傾するギミック付。
・品番3571 シボレーダンプトラック 全島22.9cm (150円)・・・障害物に当たると荷台が自動的に上昇するギミック付
◎バス 各種
・品番2958 いすゞリアエンジンバス 全長23.5cm (120円)・・・ルーフベンチレーター2ヵ所の開閉ギミック付
・品番3438 コンドルバス 全長39.3cm (180円)
・品番3584 GMバス 全長43.2cm (この年のカタログでは価格未記載だが、1963年版カタログでは880円)
・品番3586 ニューヨークバス 全長35cm (300円)
いすゞバスのアップ
・品番2471 五人乗り消防車 全長20.4cm (120円)
◎飛行機 各種
・品番1813 ノースウェスト4発旅客機 全長40.5cm翼長50cm (450円)
・品番3579 日本航空4発旅客機 全長48.9cm翼長39.3cm (470円)
・品番3470 NAVY海軍機 全長18.5cm (100円)
・品番1847 USAF AD・ヒコーキ 全長15cm (100円)
・品番3559 アメリカンエアラインDC7-C 全長34.6cm翼長27.9cm (240円)
◎鉄道 各種
・品番3578 大こだま号 全長56.7cm (600円)・・・当時151系特急こだまの玩具は人気があり、アサヒ製もこの大以外に中サイズ、小サイズの計3種類出ています。
・品番3372 サンタフェトレイン 全長31cm (240円)・・・国内向け小サイズこだま号をサンタフェ塗装とした製品
・品番2918 原子力電関 全長28.5cm (150円)
・品番3585 操作場 全長73.7cm (550円)
・品番3563 セントラルライン・デッキ付電気機関車 全長49cm (330円)
◎英国コーギートーイズ ・・・MGA、トライアンフTR3、メルセデス300SLの330円からベントレーコンチネンタルの600円までとスバル、クーペが150円、その他が170円~230円のモデルペットより遥かに高価。
◎米国AMT & 米国モノグラム プラモデル
裏表紙: ガラスの馬車が表紙とは逆向き
★オマケ(その1): 旭玩具製作所 1/19スケール 1959年スバル360
今回の1962年版カタログに掲載されている製品を幾つかオマケに掲載しておきます。このスバルのカラーバリエーションは青、オレンジ、赤、黄など。1stモデルはフロントに「SUBARU」の刻印あり。スバル360は人気があり旭玩具からは更に一回り小さなサイズでも発売されています。
1stモデルはフロントに「SUBARU」の刻印あり
★オマケ(その2): 旭玩具製作所 1/20スケール 1960年マツダR360クーペ
カラーバリエーションはグレイ、クリーム、赤茶など。出来は良いとは言えませんが可愛くて味わい深いモデル。
★オマケ(その3): 旭玩具製作所 1/18スケール 1961年トヨペットクラウン1900DX(RS31)
カラーバリエーションは黒、茶、緑金、など。萬代屋(現バンダイ)製でも同年式のクラウンが出ていますが、旭玩具製はライトが小さ目でテールが実車以上に尖り過ぎている印象。
★オマケ(その4): アサヒ玩具 テレビCM
3:10位から1970年代のアサヒ玩具ママレンジとブンブンロケットのCMが見られます。
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https://www.youtube.com/watch?v=cEOKlGt7sg0
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★1962年 旭玩具製作所 国産初のミニカー・モデルペット ~ 玩具・模型カタログ棚から 012
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