★昨日3月25日に東京でも桜が開花し、もうコートが邪魔になるような春本番の陽気です。季節が進むのは早いですね。昨日アップするつもりでいた記事ですが完成出来ずに途中で疲れて眠ってしまったので珍しく朝のアップです。
★ハードトップの起源は1910年代まで遡る。自動車に屋根がないフェートン・ボディが当たり前の時代にBピラーを省き固定式の屋根を付けたモデルが出現した。時代は下り戦後、1949年型のビュイック、オールズモビル、キャデラックでGMはBピラーのないハードトップをデビューさせ、ハードトップは1950年代にまずアメリカ車で爆発的に流行し、追って欧州車にも波及して世界的な流行となった。残念ながら現在では主に安全性の問題から極く一部の例外を除いてハードトップボディは絶滅の状況にある。
★日本車で初めてハードトップボディを採用したのは、1965年(昭和40年)7月発売のトヨペット・コロナ・ハードトップであった。
日本の自動車産業は欧米に比べて歴史が浅く大きく立ち遅れていたため、アメリカでの流行から約15年遅れて登場した。コロナ・ハードトップは1964年(昭和39年)9月に発売された3代目RT40系トヨペット・コロナ(第175回記事参照)のバリエーションとして発売された。未だスポーティーなクーペボディを持たなかったライバルの2代目ブルーバード(410系)にコロナは販売面で更なる差をつけることとなり、1967年(昭和42年)11月にコロナシリーズは月産3万台を超えて日本車初のミリオンセラー車となった。1967年(昭和42年)8月にはコロナ・ハードトップをベースに9R型ツインカム110psエンジンを搭載した、トヨタ2000GTの弟分「トヨタ1600GT」を追加。翌1968年(昭和43年)9月にコロナの上位車種「コロナ・マークⅡ」がハードトップボディをバリエーションに入れて登場すると通常のコロナ・ハードトップは生産を中止した。一方、1600GTは1969年(昭和44年)10月に10R型ツインカム140psエンジンを搭載した「コロナ・マークⅡハードトップGSS」のデビューと入れ違いに生産を中止した。3代目コロナ・ハードトップの現存車両は最高性能版の厳密にはコロナではない1600GTが多く、特に横長テールの前期型ハードトップはグレードを問わず少ないようだ。
★1965年(昭和40年)6月25日付 トヨタプレス広報 「コロナ・ハードトップ新発売~わが国初のハードトップ・タイプ」
トヨタ自動車販売(株)はコロナ・シリーズの新車種としてコロナ・ハードトップおよび同トヨグライド付とコロナ・ハードトップ1600Sの三車種を7月1日より全国一斉に発売する。価格(東京店頭渡し)はコロナ・ハードトップが75万8000円(トヨグライド付は5万5000円高)、コロナ・ハードトップ1600Sが84万8000円で当初の月産は合計1000台の予定。これでコロナ・シリーズは乗用車だけで11車種となり一層の多様性を示すこととなった。
今回新発売のコロナ・ハードトップは、最近米国で変り型乗用車として人気の高いハードトップ・タイプをわが国で初めて採用したクーペ・スタイルの乗用車で、コロナで定評のある斬新なスタイルと優れた高速性能をベースに、より一層の美しいシルエットと豪華な雰囲気を採り入れた4人乗り2ドアハードトップである。
個人オーナー層の拡大に伴いユーザーの好みも更に幅広く変化してきているが、コロナ・ハードトップはこうした顧客の要望に応え、コロナの持つ多くの特長を生かしてセダンとは違った個性的なムードを持たせることを狙いとして設計されたもので、センターピラーのないハードトップ・タイプの特性を最大限に盛り込み、スポーティーな感覚が強調されたパーソナルカー的な乗用車となっており、併せてファミリーカーとしても十分に使用できるよう4人乗り乗用車としての機能も備えている。
また、コロナ・ハードトップ1600Sは本格的なスポーツ仕様を装備したグランド・ツーリングカーでスポーツカーに匹敵する加速性能、高速性能を持っている。
◎コロナ・ハードトップの主な特長
(1) わが国初のハードトップ・タイプ=センターピラー(中柱)をなくし前後のウインドウの緩やかな傾斜とルーフからの流れるようなラインによりスポーティーな感覚を強調したハードトップ・クーペでフロント・グリル、リア・エンドもサイドのシルエットに合わせて新しくデザインされた。特にハードトップの特長として、ドライバーと景色の間を遮るものは何もなく、パノラミックな視界とコンバーチブルに似た開放感が味わえる。全体としてはコロナのアローラインが生かされつつ全高が45ミリ低くなり更に美しく個性的なクーペ・スタイルとなっている。
(2) 広く豪華な室内=フル・リクライニング・バケットシートを採用し、前席乗車を主体としているが、後席も広いスペースを取ってありファミリーカーとしても十分に使用できるほか、リア・シートバックを前に倒すと広いパッケージ・スペースとして利用できる。また、行き届いた室内装備と乗り降りの楽な広いドア、視界の広いウインドなど快適な乗り心地を楽しむことができる。
(3) コロナをベースに性能を向上=コロナで性能、耐久性とも実証済の2Rエンジン(70馬力、1500cc)を搭載、シャシー関係もコロナと同じであるがクーペスタイルによる空気抵抗の減少、車両総重量の40kg減少により、加速性能、燃費、登坂能力が向上した。
(4) スポーツ性能の向上したハードトップ1600S=最高級グランド・ツーリングカーとして本格的スポーツ仕様のコロナ・ハードトップである。エンジンは4R型(90馬力、1600cc)を搭載、オールシンクロ4段フロアシフトのミッションを採用しており、車両総重量の減少によりSS1/4マイルでは17.7秒(2人乗車)と加速性能、高速性能は一段と向上した。またスポーツカーのムードを強調するため、メーター類は丸型の新設計のものとなり、セーフティーベルトが標準装備されたほか、前輪にディスク・ブレーキをオプションで用意している(ディスク・ブレーキ付は2万円高)。
◎ 価格 (各地店頭渡し、スペアタイヤ、標準工具付)
コロナ・ハードトップ・・・・・東京75万8000円、大阪75万7000円、名古屋75万3000円
コロナ・ハードトップS・・・・東京84万8000円、大阪84万7000円、名古屋84万3000円
【主要スペック】 1965年 トヨペット・コロナ・ハードトップ1600S (型式RT51)
全長4110㎜・全幅1565㎜・全高1375㎜・ホイールベース2420㎜・車重980kg・FR・4R型4気筒OHV1587cc・最高出力90ps/5800rpm・最大トルク12.8m・kg/4200rpm・SUツインキャブ・変速機フルシンクロ4速フロアMT・乗車定員4名・最高速度160km/h・販売価格84万8000円(東京店頭渡し)
●1965年7月 トヨペット・コロナ・ハードトップ 専用カタログ (縦29.5×横24.5cm・16頁)
トヨタカタログNo.20009
中頁から
1600Sはホイルキャップも専用デザイン
1600Sの運転席はスポーティーな丸型メーターが並ぶ
ボディーカラー5色
スペック掲載頁
●1965年9月 トヨペット・コロナ・ハードトップ 専用カタログ (縦29.5×横24.5cm・16頁)
トヨタカタログNo.20009。7月発行版と全く同じ表紙で同じカタログNoながら中面の写真と文字がかなり入れ替えられたカタログ。何れも上が9月版、下が7月発行版。9月版の方がインパクトのある写真・文字に替えられている印象。表紙が同じで中が変わっている例は現在に至るまで自動車カタログには多く、間違い探しのような楽しみがある。表紙が同じでも発行年月の印字が変わっている場合には見比べてみる必要あり。
●1966年6月 トヨペット・コロナ・ハードトップ 専用カタログ (縦29.5×横24.5cm・16頁)
トヨタカタログNo.20017。マイナーチェンジ。初期型ではヘッドライトと独立していたフロントグリルの水平バーがライト部分と接する形状となった。
中頁から
純白のシートが美しい。
オートマチック「トヨグライド」車
1600S
●1967年1月 トヨペット・コロナ・ハードトップ 専用カタログ (縦29.5×横24.5cm・16頁)
トヨタカタログNo.20017。カタログNoは1966年6月版と同じながら表紙も中頁も異なる。車両には特段変更のないカタログだけの改訂。表紙にコロナ・ハードトップが毎日デザイン賞特選受賞を記念したシールが貼られている。1965年という年の日本車にはコンテッサ1300クーペ、ベレット1600GT、トヨタスポーツ800など現在の目で見ても美しいクルマは数多いが、コロナ・ハードトップも美しい1台と言えるだろう。
中頁から
●1967年6月 トヨペット・コロナ・ハードトップ 専用カタログ (縦29.5×横24.5cm・18頁)
トヨタカタログNo.20028。2回目のマイナーチェンジ。前後デザインが変わり、それまでのハードトップの特徴だった横長テールが通常のコロナと同様のデザインとなった。このデザインが1600GTのベースとなった。
中頁から
テールライトが他のコロナシリーズと同様のデザインに変更された。
新しく加えられたボディカラーの黒系統の渋いスターライトブルー
●1968年5月 トヨペット・コロナ・ハードトップ 専用カタログ (縦29.5×横24.5cm・18頁)
トヨタカタログNo.20041。最後のマイナーチェンジ。ゴールデンシリーズの名称で基本的な外観は同じままエンジンは全車1500ccからOHC1600ccに換装されて車両型式をRT53及びRT54(1600S)に変更。外観を子細に見るとフロントグリル中央とホイルキャップ中央が金色に塗られ、全車に1600のレタリングが入った。1600Sでは110psの1600GTに迫る100psのハイパワーを得た。
表紙をめくるとクルマ全体が現れる。
中頁から
雨の中の赤いコロナ・ハードトップの後ろ姿。何と美しい写真だろう。雨の中のクルマは何故か美しく見える。
1600S
●1967年10月 トヨタ1600GT 専用カタログ (縦29.5×横24.5cm・14頁)
トヨタカタログNo.20030。9R型ツインカム110psエンジンを搭載した1600GT(型式RT55)の最初のカタログ。表紙のイエローは1600GTのイメージカラーでアップで撮られたサイドルーバーはコロナ・ハードトップとの識別ポイントであった。このカタログにはコロナ・ハードトップ1600Sおよびセダン1600Sも掲載されており、1600GTがコロナのスポーツグレードの1台であることが示されている。4速車を「GT4」(販売価格96万円)、当時まだ珍しかった5速車を「GT5」(同100万円)と呼称を区別していた。5速ミッションはトヨタ2000GTのものを流用していた。
中頁から
運転席。カタログ上の最高速は175km/hだが、スピードメーターは200km/hまでの表示。
9R型ツインカムエンジン
1600Sハードトップ&セダンも併載
裏面スペック
●1968年5月 トヨタ1600GT 専用カタログ (縦29.5×横24.5cm・14頁)
トヨタカタログNo.20039。内外観はほぼ同じまま小改良を受けた後期型のカタログ。前期型では併載されていたコロナ1600Sはカタログから省かれた。
中頁から
ボディカラーは黄・赤・白・シルバーの4色
●1968年? トヨタコロナ 北米向けカタログ (A4判・14頁)
表紙は左ハンドルのハードトップ1600S。内容はハードトップとセダンが併載されている。
中頁から
リアフェンダーには国内仕様にはないリフレクターが付く。
●1968年1月 トヨタコロナ・クーペ1600S 英国向けカタログ (A4判・4つ折8面)
右ハンドルながら輸出仕様のハードトップ1600S専用カタログ。このカタログでの名称はハードトップではなくクーペ。輸出仕様にはフェンダーミラーが付かない。
中頁から
★オマケ(その1): ダイヤペット138番 1/40スケール 1966年トヨペットコロナ・ハードトップ1600S
当時定価380円。全長10cm。米澤玩具1966年1月発売。アンチモニー製。ボンネット、トランク開閉アクション付。ヘッドライト周りに2種あるようだ。ボディカラーは赤・シルバー・グリーンの3色で各々にシートカラー違いがある。
★オマケ(その2): 日本模型(ニチモ) プロコン・ユニ 1/15スケール 1966年トヨペットコロナ・ハードトップ1600S
当時定価6000円。全長27cm。日本模型1966年発売。プラスチック製完成モデル。プロコンとはプロモーショナル・ラジオコントロールの略でラジコンの1種。周波数27.120MC、到達距離50~100m。普通の子供には手が届かない高額商品だった。ニチモからはプリムス・バラクーダやマセラティ3700GT、1965年キャデラック等も高額なラジコンモデルが出ていた。このコロナ・ハードトップのプラ成型によるボディの出来はすこぶる良い。往年の名車として近年はトヨタ1600GTのミニカーはエブロを始め多数がリリースされているが、コロナ・ハードトップのミニチュアは当時物しか存在しない。逆に1600GTは現役当時は怒涛のようにモデル化された2000GTの陰に隠れて全くミニチュアモデルには恵まれなかった。
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★1965年トヨペットコロナ ハードトップ 国産初のハードトップ ~自動車カタログ棚から 214
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