★宇津井 健さんが3月14日に82歳で亡くなられた。亡くなられた当日に元々宇津井さんのファンだった加瀬文恵さんと再婚し、これで安心できると言い残して逝かれたという。法曹関係者によれば入籍日と死亡日が同日というケースは極めて稀ではあるが法的な問題は特段ないとのこと。
宇津井さんは1931年(昭和6年)10月24日生まれで、1950年代初頭(昭和20年代後半)から約60年に亘りスター俳優として映画・テレビで活躍された。
宇津井さんと言えば、私の世代では1970年代に百恵ちゃんと共演された「赤い~」シリーズなのだが、私より少し上の世代であれば何と言っても1965年(昭和40年)4月9日から1971年(昭和46年)12月24日までTBS系で350話が放送され、最高視聴率40%を超えた人気ドラマ「ザ・ガードマン」の印象が強いに違いない。ザ・ガードマン(初期のタイトルは「東京警備指令 ザ・ガードマン」)は金曜日の夜9時半からと子供には遅い時間帯の放送で当時まだ幼稚園児から小学生だった私は殆ど見ることはなかった。しかし、印象的なタイトル曲は覚えているので親が見ているのを時たま横で見ていたのかもしれない。「子供は早く寝なさい」などと言われながら。
★ザ・ガードマンは日本初の警備会社「日本警備保障」(現セコム)をモデルに製作されたドラマで、主役の乗る劇中車は白黒放送だった前期はドイツフォードの1964年タウナス17M(P3)、カラー放送となった後期は1967年オペル・レコルトC(当時の日本での呼称はレコード)だったが、今回は1966年頃にツクダが発売した恐らくザ・ガードマン唯一のキャラクターモデル(オマケ1参照)に因み、1965年の米フォード・ギャラクシーをピックアップします。前述の通り実際の劇中車はドイツ製の大衆車(と言っても輸入が自由化されたばかりの当時、外車はどれも高嶺の花の時代だった)が使われているが、タウナスよりはアメリカンフルサイズのギャラクシーの方が数段クルマとしてはインパクトがあり、もしザ・ガードマンの劇中車として使われていたならと想像するのも楽しい。
★1964年8月デビューの1965年型フォード・ギャラクシーはフルモデルチェンジで前年までより遥かにモダンでスマートなボディと縦目デュアル・ヘッドライトの顔が特徴的だった。
1965年はGMのキャデラックもポンティアックもギャラクシーの兄弟車マーキュリーも縦目4灯ヘッドライトで、縦目が1960年代半ばのアメリカ車のデザイントレンドだったと言えるだろう。1960年代の日本車で縦目というと1960年(昭和35年)登場の初代セドリック前期型と1967年(昭和42年)登場の3代目グロリア(通称タテグロ)を思い浮かべるが、両車共に米車デザインの影響を受けていたのは間違いないだろう。
1965年のラインナップは上からギャラクシー500LTD(翌66年よりLTDは独立したシリーズとなった)、ギャラクシー500XL、ギャラクシー500、カスタム500、カスタム、そしてワゴンの6シリーズ。自動車史研究の第一人者であった五十嵐平達氏によれば最上位グレードのギャラクシーLTD(リミテッド)は往年のビュイックに存在した最上級シリーズの名称をフォードが故意に用いたもので、このカタログには掲載されていないリムジンボディも製作されたという。ちなみに日本車でも1970年代に東洋工業(現マツダ)がコスモAP(第114回記事参照)等の最上位グレードにリミテッドの名称を用いていた基本のボディタイプは4ドアセダン、4ドアHT、2ドアセダン、2ドアHT、2ドアコンバーチブル、5ドアワゴンの6種。エンジンは6気筒4L/150hpからV8 7L/425hpまでの4種が選べた。この時点の日本車では未だハードトップボディさえも生まれておらず、エンジン排気量もボディサイズも米車は日本車から見ると遥か遠い雲の上の存在だった。
【主要スペック】 1965年フォード・ギャラクシー500LTD
全長5334mm・全幅1965mm・全高1412mm・ホイールベース3022mm・車両重量1750kg・FR・6997cc(427cu)V型8気筒OHV・最高出力425hp/4600rpm・最大トルク60.95mkg/2200rpm・変速機3速コラムAT(or4速MT)・乗車定員6名・最高速度180km/h
●1964年8月発行 1965年フォード・ギャラクシー カタログ (縦23×横28cm・24頁)
フォード・カタログNo.FDC-6505。
中頁から
500LTD 4ドアHT
500LTD 2ドアHT
XL2ドアコンバーチブル&XL2ドアHT
500 4ドアHT
500 2ドアHT
500 4ドアセダン
500 2ドアコンバーチブル
ベーシックグレードのカスタム2ドアセダン&4ドアセダン
ステーションワゴン
ダッシュボード、オプション&アクセサリー
裏面スペック
★オマケ(その1): ツクダ 1/18スケール 1965年フォード・ギャラクシー2ドアハードトップ「ザ・ガードマン」
全長29cm。当時定価250円?フリクション駆動。ナンバープレートが「1966」なので、ザ・ガードマンの放送が始まって間もない頃の製品と思われる。増田屋製ギャラクシーの金型を流用した製品。ザ・ガードマンで使用されていた独フォードタウナス17Mも当時、バンダイからモデル化されていたが、ツクダがバンダイ製タウナスを使わずタウナスより遥かに大きな増田屋製の米フォードギャラクシーをガードマンカーに仕立て上げた理由は謎。単に同じフォードということで安易につくられただけなのかもしれない。ツクダは米澤玩具の金型を流用したケロヨン仕様のトヨタ2000GTオープンカーなどキャラクター玩具/マスコミ玩具に力を入れていたメーカーだった。日本製ミニカーではダイヤペットが510ブルーバードクーペと80ミリサイズの2代目マークⅡ HTで警備保障仕様を出していた。
ナンバープレートは「1966」
トランクには1962年(昭和37年)7月に日本警備保障が設立された際につくられた社章がプリントされている。社章はフクロウと鍵を組み合わせたデザインに「VIGILAMUS DUM DORMITIS」(ラテン語=万人眠れるとき、我等警備すの意)と「SP」の文字を入れたもので、当時の日本警備保障の車両には勿論、ザ・ガードマンの劇中車にも描かれていた。
●増田屋1965年フォードギャラクシー2ドアHT画像 (1967年増田屋齋藤貿易 総合カタログより)
品番3560「ノーマル」
品番3562「ポリスカー」
品番3559「ファイアーチーフ」
品番3558「赤十字アンビュランス」
★オマケ(その2): 仏ディンキー 1/43スケール 1966年フォード・ギャラクシー4ドアハードトップ
全長12.5cm。ダイキャスト製。フロントグリル中央に太い水平バーが入った66年式をモデルにしているようだ。ボンネット・トランク・4枚のドアの全てが開閉するにも関わらず、プロポーションの崩れが見られない仏ディンキーの傑作。遊んでだいぶ傷ついてしまったこの状態でも堂々としたプロポーションとダイキャストのズッシリとした重量感が魅力的なミニカー。
フル開閉アクション
★オマケ(その3): 1965年フォードCM 「ロールス・ロイスとの比較編」
★オマケ(その4): 1965年TBSドラマ「東京警備指令 ザ・ガードマン」オープニング
★オマケ(その5): 1968年TBSドラマ「 ザ・ガードマン」オープニング&エンディング
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★1965年フォード・ギャラクシー 宇津井 健 ザ・ガードマン ~ 自動車カタログ棚から 213
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