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Channel: ポルシェ356Aカレラ
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★1959年ヂャイアント三輪トラック 愛知機械のキツネたち ~ 自動車カタログ棚から 187

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★名古屋市熱田区に本社を置く愛知機械工業株式会社は1962年(昭和37年)に日産自動車と業務提携を開始し現在では日産の子会社となっているが、そのルーツは親会社の日産より古く19世紀末の1898年(明治31年)7月に創業した愛知時計製造株式会社にまで遡る。
第二次世界大戦中の1943年(昭和18年)2月に航空機部門が分離独立し「愛知航空機株式会社」となり大日本帝国海軍の戦闘機「彗星97」や「99式艦上爆撃機」などを製造した。戦後は民需産業への転換をして1947年(昭和22年)4月より三輪トラック「ヂャイアント号の製造を始めた。1949年(昭和24年)5月に企業再建整備法により「新愛知起業株式会社として再出発した後、1952年(昭和27年)12月に現在の社名「愛知機械工業株式会社」に改称された。現在の社名となってからでも既に60年以上の歴史を誇る企業である。

★1947年(昭和22年)4月より愛知機械工業が製造した三輪トラック「ヂャイアント号」は、1960年(昭和35年)秋までの13年間に亘り製造された。
マツダ・ダイハツ・くろがねのオート三輪御三家には及ばない、三輪メーカーとしては中堅どころのポジショニングながら、先進的かつユニークな製品を輩出したことで知られる。戦後初めてオート三輪に水冷OHVエンジンを搭載したのは1947年4月の最初のヂャイアントAA1型(OHV単気筒636cc19ps)であり、1951年(昭和26年)3月発売のAA7型コンドル(水平対向2気筒1145cc)ではオート三輪史上初めて丸ハンドル・完全密閉式のフルキャビンを採用した。二輪と同じバーハンドルで屋根もないオート三輪が当たり前の時代に誕生したコンドルは、マツダ・ダイハツが1957年秋発売の1958年型で初めて丸ハンドルを採用するより6年も早い時期の丸ハンドル+フルキャビンの採用であった。

★コンドルで採用されたボディスタイルは当時の三輪としては洗練されたもので、平らなボンネットにヒゲのような装飾アクセントというキツネのような独特の表情は最後のヂャイアントに至るまで踏襲された。
ヂャイアントはエンジンも進歩的で三輪では空冷が一般的だった時代に水冷しかもOHVの水平対向を採用し搭載位置もアンダーフロアとして、二輪同様にエンジンを跨いで1名乗車が当たりだった時代に2名ないし3名乗車を可能としていた。しかし、他車に比べて進歩的だったことが逆にアダとなり、右へ倣え的な平凡さを求めた日本のユーザーには広く受け入れられぬまま1960年(昭和35年)9月に最後の大型三輪AA24型の生産を打ち切った。なお、オート三輪生産終了後の愛知機械工業は1970年(昭和45年)10月まで軽商用車「コニー」を独自ブランドで生産した。(1961年発売のコニ-グッピーについては本シリーズ第37回記事を参照下さい)

★ヂャイアント三輪の生涯は1947年から1960年までの僅か13年間でしたが、恐らくセールスカタログは消防車やダンプカー等の特装車も含め各年の各車種毎に夥しい種類が発行されたと思われます。
生産終了から既に半世紀以上の時を経た現在、その全てを蒐集することは不可能に近いでしょう。そこで今回は手許のカタログ棚にある極く一部のヂャイアント三輪のカタログを駆け足でご紹介します。手許にあるものだけでも少々数が多いため資料性を考慮してカタログの表紙画像を中心にご紹介することとします。


【主要データ】 1959年ヂャイアント三輪トラックAA24RHS型 (1959 GIANT 3 Wheeler)
全長6080㎜・全幅1830㎜・全高1830㎜・荷台長4040㎜・ホイールベース3750㎜・車重1745kg・AE34型水冷4サイクル4気筒水平対向OHV1488cc・最高出力58ps/4500rpm・最大トルク9.8kgm/3500rpm・変速機4速フロアMT・最大積載量2000kg・乗車定員3名・燃費12km/L・最高速: 不明・販売価格71万6000円


●1954年6月5日発行 愛知機械工業広報誌「ヂャイアントファン」第20号 (B5判・16頁)
1954年(昭和29年)3月に名古屋、大阪、東京で開催されたAA-11型発表会の特集号。1954年3月5日~7日に名古屋市桜通り日銀名古屋支店前で開催された名古屋展示会には歌手コロンビアローズ(初代: 1933年1月9日―)初めモデル嬢出場の懸賞金付写真コンクールが行われたことなどが記載されている。この時代の日本は大変なカメラブームで自動車と女性を被写体にした写真コンクールが展示会と併せて懸賞金付で開催されたようだ。
$ポルシェ356Aカレラ-ファン表紙
中頁から名古屋展示会でのAA-11型とコロンビアローズ
$ポルシェ356Aカレラ-ファン中ローズ


●1954年発行 ヂャイアント三輪 総合チラシ (A3判・片面印刷)
1954年(昭和29年)発行と思われる総合チラシ。1954年というと、第1回東京モーターショーの開かれた年。単気筒636cc19ps1トン積で1つ目ライトのAA-6H型、2気筒855cc28ps1トン積AA-13型、そしてこの年の3月に発売された水平対向2気筒1200cc41ps1.5トン積AA-11型の3車に加えてダンプカー、消防車のラインナップ。恐らく全て単独のカタログも発行されているはず。
$ポルシェ356Aカレラ-54総合


●1954年3月発行 ヂャイアント三輪AA11型 専用チラシ (B4判・片面印刷)
新発売の印字があるので、恐らく1954年3月のデビュー時のもの。
$ポルシェ356Aカレラ-54AA11


●1954年発行? ヂャイアント三輪ダンプカーAA-6D 専用チラシ (B4判・片面印刷)
636cc19psのAA-6ベースのダンプカー専用チラシ
$ポルシェ356Aカレラ-54ダンプ


●1955年発行 ヂャイアント三輪 総合チラシ (B4判・片面印刷)
ラインナップから1つ目ライトのAA-6H型が消え、代わりに水平対向2気筒524cc750キロ積で2灯ヘッドライトのAA-15型が加わった。
$ポルシェ356Aカレラ-55総合


●1955年発行 ヂャイアント三輪AA-13型 専用チラシ (B4判・片面印刷)
855cc28ps1トン積み全長3860mmの小型三輪AA13型の専用チラシ。
$ポルシェ356Aカレラ-55AA13


●1955年4月発行 ヂャイアント三輪AA-11型 専用カタログ (B5判・2つ折4面)
前年にデビューした1.5トン積AA-11型には標準の全長4873㎜(荷台長2400㎜)に加えてAA-11Lとして全長4873㎜(荷台長3000㎜)のロングボディが追加された。
$ポルシェ356Aカレラ-55本11表紙
中頁から
$ポルシェ356Aカレラ-55本11中頁


●1956年3月発行 ヂャイアント三輪AA-11型 専用カタログ (B5判・2つ折4面)
女性が運転するヂャイアントを描いた何とも魅力的な表紙のカタログ。外観は同じまま1200ccエンジンは燃焼室と吸入系統の改造により46psにパワーアップした。
$ポルシェ356Aカレラ-563本11表紙
中頁から
$ポルシェ356Aカレラ-563本11中頁


●1956年発行 ヂャイアント三輪AA-13型 専用チラシ (A4判・片面印刷)
855cc28ps全長3860㎜の1トン車。前年は角型だった後輪ホイルカバーが丸型となり、全長4190㎜のロングボディが追加された。
$ポルシェ356Aカレラ-56AA13


●1957年 ヂャイアント三輪 総合カタログ (縦14×横30cm・3つ折6面)
1956年秋の発行?ラインナップは750kg積AA-15型、1トン積AA-13型、1.5トン積AA-11型、2トン積AA-14型に加えてダンプカーと消防車。この時点で消防車以外の全車にドアが付いた。
$ポルシェ356Aカレラ-57総合
中面
$ポルシェ356Aカレラ-57総合中頁


●1958年3月発行 ヂャイアント三輪AA-25型 専用カタログ (縦18.5×26cm・2つ折4面)
600cc26psで1トン積のAA25型。1957年までのAA-13の後継車。しかし、1958年10月にはAA-26がデビューしたので極く短命に終わったようだ。
$ポルシェ356Aカレラ-58AA25


●1958年6月発行 1958年式ヂャイアント三輪トレーラーAA-11T型 専用カタログ (縦14×横29.5cm・3つ折6面)
AE15型1145cc46psのAA11をトラクターとしてトレーラーを牽引させる仕様で全長は7m80cmに及ぶ。発売は1955年。ヂャイアント三輪と言えば、全国の国鉄駅前の日本通運で使用されたこのトレーラー車を思い出すという年配の方もおられることだろう。当時の幼児向け絵本にも日通のトレーラーとして頻繁に登場していた。
$ポルシェ356Aカレラ-58トレーラー表紙
中面
$ポルシェ356Aカレラ-58トレーラー中面


●1958年8月発行 1959年式ヂャイアント三輪AA-14型 専用カタログ (縦14×30cm・3つ折6面)
1145cc46ps2トン積車。この年式までのヂャイアント三輪はスチール製ドアは下側だけで上はビニールの簡易タイプ。また、室内はセンターメーターでハンドルの前には何もつかなかった。
$ポルシェ356Aカレラ-58AA14


●1959年 ヂャイアント三輪 総合カタログ (縦14×横30.5cm・3つ折6面)
1958年秋の発行?ラインナップは750kg積AA-15型、1トン積AA-26型、1.5トン積AA-11型、2トン積AA-14型に加えてヂャイアント最大最強の1488cc58psエンジン2トン積AA-24型。その他、特装車にはダンプ、消防車、トレーラー、バキュームカーとバリエーションが多い。AA-15型以外は上部窓枠の付いた完全なドア付となった。
$ポルシェ356Aカレラ-59総合表紙
中面
$ポルシェ356Aカレラ-59総合中頁


●1958年10月発行 ヂャイアント三輪AA-26型 専用リーフレット (B5判・両面1枚)
1959年式として発売されたヂャイアント三輪1トン車の最終タイプAA-26型。905cc36ps。
$ポルシェ356Aカレラ-AA26リーフレット


●1958年10月発行 ヂャイアント三輪AA-26型 専用カタログ (B5判・2つ折4面)
1トン車で全長4000㎜ながら全幅は1755㎜もあり、表紙の写真のような3人乗りも余裕だったようだ。
$ポルシェ356Aカレラ-AA26本表紙


●1959年8月発行 ヂャイアント三輪AA-26型 専用カタログ (B5判・2つ折4面)
1958年10月発行版の改訂カタログ。表紙から新発売の文字が消え、中面のレイアウトも若干変わった。
$ポルシェ356Aカレラ-59AA26


●1959年8月発行 ヂャイアント三輪AA-11型 専用カタログ (縦14×横29.5cm・3つ折6面)
1954年3月にデビューしたAA-11型の最終カタログ。ルーフはキャンパス貼りながらドアは下側だけではない完全なものとなり、ダッシュ中央にあったメーター類もハンドル正面に移された。
$ポルシェ356Aカレラ-59AA11


●1958年8月発行 ヂャイアント三輪AA-24型「スーパー4」専用カタログ (B5判・4つ折8面)
ヂャイアント三輪の歴史の最後に登場した最大最強の車両。AE34型4気筒1488cc58ps搭載のAA-24型「スーパー4」。長尺車は全長6mを超える恐竜のような三輪。4気筒エンジンのヂャイアントはこのクルマのみ。グロリアが6気筒のスーパー6を登場させるのは、このクルマ登場の5年後のことだが、この「スーパー4」のネーミングは、強力・経済・堅牢・静粛の4拍子揃った4気筒エンジン車という意味とカタログに記載されている。
この初期型AA-24では、まだドア上部がビニールで室内はセンターメーター。ツートンカラーが洒落ている。
$ポルシェ356Aカレラ-58スーパー表紙
中頁から
車名「スーパー4」の由来
$ポルシェ356Aカレラ-58スーパー1中由来
全長6mを超える巨体
$ポルシェ356Aカレラ-58スーパー2中6m巨体
1958年までのヂャイアントはセンターメーター
$ポルシェ356Aカレラ-58スーパー3センターメーター
裏面スペック
$ポルシェ356Aカレラ-58スーパー4裏スペック


●1959年8月発行? ヂャイアント三輪AA-24型「スーパー4」専用カタログ (B5判・12頁)
AA-11他と同様にドアが下側だけではない完全なものとなり、ダッシュ中央にあったメーター類もハンドル正面に移された。
$ポルシェ356Aカレラ-59スーパー表紙
中頁から
メーターがハンドル正面に移動した。
$ポルシェ356Aカレラ-60スーパー中メーター


●1960年発行? ヂャイアント三輪AA-24型「スーパー4」専用カタログ (B5判・12頁)
恐らくヂャイアント三輪最後のカタログ。この表紙の絵のようにオート三輪が材木運搬に使われる例は多かった。
$ポルシェ356Aカレラ-60スーパー表紙


●1959年発行? ヂャイアント三輪ダンプカー 総合カタログ (B5判・8頁)
$ポルシェ356Aカレラ-59ダンプ表紙
中頁から
1.5トン積46psのAA-11D型
$ポルシェ356Aカレラ-59ダンプ11中
2トン積58psのAA-24D型
$ポルシェ356Aカレラ-59ダンプ24中


●ヂャイアント車名・商標の由来: ギリシャ神話に出てくるヂャイアント(巨人)のような力とスピードを誇り、エンブレムは巨人の顔を主体にピラミッドとスフィンクスを組み合わせてデザインされた。(1959年AA-24型カタログより)
$ポルシェ356Aカレラ-商標由来



★オマケ(その1): マルサン商店 1/18スケール 1960年ヂャイアント三輪ダンプカーAA24D型
全長約30cm・全幅約10cm。当時定価550円。マルサン品番No.3604(後に013)。マルサンの1966年版カタログまで掲載されており、実車生産終了後も連綿と売られた三輪玩具。幼児の砂場遊び用の玩具でスコップと工事現場の猫車(1輪車)が付属。0.8ミリ鉄板を使用し丈夫で壊れにくいことを売りにしたマルサン・ブルドッグシリーズの1台で出来はアバウトながらヂャイアントの特徴はよく出ている。赤に水色荷台が1stモデルで前輪がステアしヂャイアント特有の顔の三本ヒゲもプレスで表現されている。赤に濃い青の荷台は2ndモデルで前輪のステア機構とヒゲのプレスが省略された。2ndモデルはウサギ屋に金型が流れて再販されている。ウサギ屋版のデッドストックが1980年代前半に大量に発掘され都内の雑貨店等でも1台1000円で山積みされていた関係で、それから30年を経た現在でも2ndモデルは最も入手し易い当時もの三輪モデルと言える。マルサンは何故か愛知機械工業と縁があり、ヂャイアント三輪は15cm程度の小サイズでもモデル化し、後にヂャイアントコニー360トラックおよびライトバンのモデルも発売した。
$ポルシェ356Aカレラ-ブリキ(1)
$ポルシェ356Aカレラ-ブリキ(2)
1stモデル
$ポルシェ356Aカレラ-ブリキ(3)初版
2ndモデル
$ポルシェ356Aカレラ-ブリキ(4)再販
マルサン商店1963年版カタログから
$ポルシェ356Aカレラ-マルサンカタログ


★オマケ(その2): コロンビア・ローズ 「こころの小雨」 1956年
ヂャイアント三輪AA-11型の新車発表会に登場した初代コロンビア・ローズ(1933年1月9日-)の歌をひとつ。作曲:服部良一。作詞:野村俊夫。1956年(昭和31年)10月31日公開の日活映画「飢える魂」の主題歌。映画の主演は三橋達也と南田洋子。



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