★惜しくも2011年(平成23年)6月に8代目で生産販売を終えた「三菱ミニカ」の初代は1962年(昭和37年)10月1日に発売された。
前年1961年(昭和36年)3月にデビューした三菱初の軽四輪商用車「三菱360バン」をベースに後部をノッチバックボディとし、当時の軽で唯一のFR3ボックス乗用セダンとして誕生した。開発・製造は三輪トラックを手掛けていた倉敷水島の新三菱重工で行われた。小さいながらもリアにはトランクを持ち、ささやかなテールフィンも付いたチャーミングなデザインは1950年代に久保田のトラクター等のデザインを手掛けていたインダストリアル・デザイナー金子徳次郎氏によるものと言われる。RRのスバル360やマツダR360クーペ、キャロル、FFのスズライトフロンテ等のライバルに対してモノコックボディに2サイクル強制空冷2気筒エンジンをフロントに縦置きしたコンベンショナルなFRの軽自動車として、そのスタイリングと共にミニカは異彩を放っていた。
★初代ミニカデビュー時のエンジンはME21型2ストローク空冷直列2気筒・359cc17馬力、デビューから2年後の1964年(昭和39年)11月にはME24型エンジンに換装し分離給油方式(オートミックス)を採用して出力は18馬力に若干アップした。
1966年(昭和41年)12月に初めて装備を簡略化した廉価版のスタンダードグレードを追加、1967年(昭和42年)5月のマイナーチェンジでME24D型エンジンに換装して出力は21馬力に向上し、1968年(昭和43年)9月には出力23馬力の2G10型エンジンを搭載した「スーパーデラックス」が追加された後、生産開始から丸7年を経た1969年(昭和44年)7月7日に2代目「ミニカ70」にバトンを渡した。
ミニカは1960年代の三菱の小型乗用車コルト同様、保守的な機構からライバル他車に比べて地味な存在ではあったが、ライバルに勝るとも劣らない愛くるしいルックスを持った魅力的な軽の1台だった。リアウインドにレースのカーテンが似合う軽と言えば、このミニカ以外にはない。また、独特のテールフィンのデザインからオールディーズが最も似合う日本の軽はこの初代ミニカだろう。
【主要スペック】 1962年 三菱ミニカ (型式LA20)
全長2995mm・全幅1295㎜・全高1370mm・ホイールベース1900mm・車両重量490kg・FR・ME21型強制空冷2サイクル直列2気筒359cc・最高出力17ps/4800rpm・最大トルク2.8kgm/3500rpm・変速機4速コラムMT・乗車定員4名・最高速86km/h・販売価格39万円
●1962年10月発行 三菱ミニカ 本カタログ (縦26×横22cm・12頁)
中頁から
全長僅か3mの軽ながら立派なトランク付
ドアはスバル360同様に前開き
室内
17psエンジン
スペック掲載頁
四面図
裏表紙
●1962年12月発行 三菱ミニカ 本カタログ (A4判・12頁)
車両自体には変更のないカタログのみの改訂
中頁から
●1963年4月発行 三菱ミニカ 本カタログ (A4判・12頁)
デビュー半年目にして最初のマイナーチェンジ。フロントグリルのパターンが変り、初期型ではグリル内にあったスモール/ウインカーがヘッドライト下に移され、リアにバックライトが追加された。室内ではシートがツートンカラーに変更。エンジンには変更なし。
中頁から
シートを当時流行のツートンに変更
●1964年11月発行 三菱ミニカ 本カタログ (A4判・12頁)
2度目のマイナーチェンジ。丸味を帯びていたフロント周りが角ばったプレスに変更となり、ライト周りとグリルも意匠が大きく変った。スモール/ウインカーはサイドからも視認出来る位置に移された。リアピラーのガーニッシュがなくなり代わりに赤と青のミニカバッチが付けられた。エンジンはME24型18psに換装され、それまでのガソリン・オイル混合から分離給油方式に変更された。
中頁から
運転席からの眺め
18psにパワーアップ
この時点のボディカラーは2色のみ
●1966年12月発行 三菱ミニカ 本カタログ (A4判・12頁)
装備を簡略化したスタンダード追加。外観上、スタンダードはメッキのウインドモールやタイヤのホワイトリボンが省かれ、フロントグリル中央に赤と青のミニカマークが付けられた。エンジンは18psのままで変更なし。表紙の遊園地はどこだろうか。
中頁から
追加されたスタンダードにはグリル中央に赤青のミニカバッチが付く。
マイナーチェンジでホーンボタンが何とも珍妙なデザインになった。
リアトレイにはファンタオレンジ?
●1967年5月発行 三菱ミニカ 本カタログ (A4判・12頁)
マイナーチェンジ。外観の変更はないまま、エンジンはME24型21psに換装された。
中頁から
スタンダード
21psの新エンジン
●1968年9月発行 三菱ミニカ 本カタログ (A4判・12頁)
最後のマイナーチェンジ。フロントグリルは全車ブラックアウト化され、ダッシュボードも黒レザーの安全性の高いものに変更された。同時にリクライニングシート、温水式ヒーター等の装備を盛り込んだスーパーデラックスが追加され、スーパーデラックスのみ23psの2G10型エンジンが搭載された(デラックスおよびスタンダードは最後まで21psのまま変わらず)。
中頁から
もはやミニスカートの時代に。
安全パッド化で室内意匠を大幅に変更
透視図
スーパーデラックス専用23psエンジン
スーパーデラックス・デラックス・スタンダードのラインナップ
★オマケ(その1): 国産名車 1/43スケール 1963年 三菱ミニカ
現在も続いている書店売り国産名車シリーズの1台。定価1790円。ダイキャスト製。外箱や台座には1962の印字があるが、フロントスモールライトがグリルの外に出された初めのマイナーチェンジ後の1963年型をモデルとしている。初代ミニカは残念ながらミニチュアには恵まれず、当時物としては三菱の出した1/20程度のアンチモニー製シガレットケースのみ。標準スケールのミニカーはこの国産名車のみ。初代ミニカのミニチュアとしては近年、他に鉄道模型の日本型HOスケール(1/80スケール)で自動車運搬用貨車とセットで販売された高価な少量生産モデルが出ている(モデルワム製?)。
★オマケ(その2): ロコ・モーション by リトル・エヴァ 1962
初代ミニカがデビューした1962年にビルボード1位となったオールディーズヒット。カバーも多い名曲。
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★1962年初代ミニカ 半世紀の歴史を閉じた軽 オールディーズ ~ 自動車カタログ棚から 186
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