★2015年の第44回東京モーターショーのいすゞブースではショー開催に合わせ10月28日付で21年ぶりにフルモデルチェンジした大型トラック「ギガ」(GIGA)と2015年8月18日に15年ぶりにフルモデルチェンジした大型路線バス「エルガ」(ERGA)という2つのトピックがあり、それに加え、いすゞ自身によってレストアされた戦後間もない時期のTX80型トラックの展示が目を引いた。
今回は新型「ギガ」を中心に日産NV200タクシーやモーターショーで販売されたミニチュアカーなども併せてご紹介することとしたい。
★2015年(平成27年)10月28日(水)、いすゞ自動車株式会社(本社:東京都品川区、社長:片山 正則、以下「いすゞ」)は、大型トラック「ギガ」シリーズで主力の単車系(6UZ1型エンジン搭載車)を1994年(平成6年)以来21年ぶりにフルモデルチェンジし全国で発売した。 (以下、プレスリリース要約・抜粋)
新型「ギガ」は、労働力不足や運行コストの低減などの課題、環境や安全に対するニーズの高まりを受け、車両単独性能の追求から「運ぶ」システムへと進化し、様々なシーンで車両を使用する業務をサポートしていくことを目標に開発された。業界のニーズと次世代トラックのあるべき姿を見据え、1)快適な運転環境の実現、2)省燃費の追求、3)トータルセーフティの追求、4)高積載の確保、5)情報通信による遠隔サポートといった5つの視点から性能を磨き上げた。
主な改良点は以下の通り。
【エクステリア】
•新空力骨格キャブにより、空気抵抗を低減させると同時に、昇降ステップやグリップ等を効率よく、かつ美しくレイアウトするなど、使い勝手と経済性能を両立した。
•機能美を追求したフロントフェイスで、大型フロントグリルおよび大型インタークーラーにより冷却性能が向上した。
【インテリア】
•運転操作性の向上として、セミラウンドインパネを採用した。スイッチ類をメーター・インパネ周りに集約し、また使用頻度に合わせてゾーン分けし機能的に配置することで、運転時の操作性や識別性が向上し、より効率的な操作が可能となった。また、ステアリングスイッチと4インチ液晶モニターのマルチインフォメーションディスプレイを採用することにより、安全で負担のない操作を可能とした。
•シートのホールド感や調整機能、通気性などを改善し、より快適な室内空間となった。
【エンジン】
•6UZ1エンジン本体を改良。ターボチャージャーの仕様変更、インタークーラーとラジエーターの大型化、EGRクーラーの高効率化、サプライポンプの変更、新インジェクターの採用、超高圧コモンレールの採用により低・中回転域のトルクアップを図り燃費も向上。
•通常の運転操作でエンジンの自動停止と再始動が可能な「ecostop」(エコストップ)をカーゴ系およびダンプ系に標準装備し、アイドリング時の燃料消費削減を実現。(一部車型を除く)
【トランスミッション】
•進化した自動式変速トランスミッション「Smoother-Gx」により、スムーサーのシフトショックを低減し、より滑らかな発進を実現。また、エンジンリターダを採用することで補助ブレーキの制動力も向上。
•6UZ1-TCSエンジン、スムーサーGx12段の車両に「Smartグライド」を設定。下り坂などで一定走行中、アクセルを軽く踏んでいる際に自動でクラッチを切り、車両の走行慣性を有効活用した省燃費運転を実現。
【トータルセーフティの追求】
•プリクラッシュブレーキでは、従来の衝突被害軽減ブレーキ機能に加え、移動障害物に対する衝突回避支援機能を追加。障害物を検知する手段をミリ波レーダーによる単独検知から、ミリ波レーダーとカメラを併用する二重検知にすることで、前方の検知精度が大幅に向上。
•車線逸脱警報(LDWS)の採用により、カメラが走行車線を認識し、車両が走行車線から逸脱するとシステムが判断した場合、警報音と4インチ液晶モニターの画面表示で警告。
【高積載の確保】
•フルモデルチェンジによる重量増を最低限に抑制。
【情報通信による遠隔サポート】
•データ通信とインターネットを融合し車両データを遠隔で解析する仕組み「MIMAMORI」(見守り)を標準搭載した。コンプライアンス遵守、エコドライブ指導等に有益な様々なサービスを提供するだけではなく、従来は判らなかった車両コンディションが、インターネットを介して、ドライバーサイドが容易に確認することが可能となった。
•「MIMAMORI」で事前に入手した車両データを活用した高度純正整備「PREISM」により、正規ディーラーでの高品質な整備により車両の安定稼働確保を強力にバックアップ。
<目標販売台数>
8,000台/年間
【主要スペック】2015年いすゞギガGカーゴ (2015 Isuzu GIGA G-Cargo) 車両型式: CYJ77BWX-D23A
全長11950㎜・全幅2495㎜・全高3790㎜・車両重量10920kg(車両総重量24930kg)・最大積載量13900kg・8×4(後軸4輪駆動)・6UZ1-TCS型9839ccエンジン・最高出力380ps/1800rpm・最大トルク185kg・m/1000~1200rpm・最大積載量13900kg・乗車定員2名・変速機:スムーサーGX12速AT・リヤ4バッグエアサスペンション・重量車モード燃費4.25km/L・燃料タンク容量300L・タイヤサイズ:245/70R19.5-136/134J・架装メーカー:日本フルハーフ・東京地区希望小売価格2341万6560円
●2015東京モーターショーの新型いすゞギガ
エンジン搭載位置の関係もあってか現代のトラックの顔は一見どれも似ている。どこか怒ったような顔に見えるが力強さを感じさせるデザインである。
●2015年 新型いすゞギガ 広報写真
新型ギガについては、「MIMAMORI」(見守り)と呼ばれるインターネットを介したシステムで車両コンディション等の情報の把握が可能になったことが、実用上では旧型との大きな差異といえる。
シャシー
運転席
●2015東京モーターショーの1948年いすゞTX80型5トン積みトラック
1985年(昭和60年)まで北海道・帯広にて37年間現役で稼動した後、いすゞに里帰りした車両。自動車歴史研究の第一人者五十嵐平達氏の愛弟子・和田由貴夫氏に伺ったところでは1985年に里帰りした折に五十嵐氏と誌乗した記事が当時のモータービークル誌上に掲載されているとの由。実車カタログについては、本シリーズ第265回記事参照。
七宝焼きの「いすゞ」のエンブレムはレプリカ
テールライトはライセンスランプを兼ねたものが右下に1個のみ。テールライトのオリジナルは丸型と思われるが、リフレクターを組み込んだ時代の新しいパーツが付けられている。
●2015東京モーターショー いすゞTX80型5トン積みトラック 広報写真
腕木式ウインカー
エンジン
運転席内は木製、ルーフにのみ鉄板が張られた構造。
★2015年 第44回東京モーターショー いすゞ自動車プレス用総合カタログと一般配布用総合カタログ
発売されたばかりの新型ギガの本カタログは残念ながら未入手のため、これはモーターショーで配布された新型ギガが掲載された総合カタログ(パンフレット)。同じデザインでA4判の大きい方がプレス用、小さな方(21×21cm)が一般配布用カタログ。何れもレストアされたTX80について頁を割いており、一般配布用には「いすゞ史に残る大型トラックの系譜」と題する略史も掲載されている。
【中頁から】
新型ギガ掲載箇所(プレス用)
ディテール、スペック
エンジン
1948年TX80
いすゞ大型トラックの変遷(一般配布カタログより)
★2014年9月 いすゞGIGA 消防車 専用カタログ (A4判・2つ折4面)
新型GIGAのカタログの代わりに旧型GIGAのカタログを一つ。戦後、TXの時代から連綿と発行されてきた、いすゞ大型消防車専用カタログの最新版だがこれも新型に切り替わるだろう。
★2015年6月 日産NV200タクシー/NV200タクシーユニバーサルデザイン 専用カタログ (縦25×横25cm・16頁)
2014年で生産を終えたセドリックタクシーの後任車だが、「タクシーは昔ながらの普通のセダンでないと」という業界およびユーザーの意識の壁が崩れず苦戦しているようだ。しかし、トヨタもクラウンコンフォート/コンフォートの生産を2017年で打ち切るとしているので、そう遠くない将来にセダンの営業車は個人タクシーかハイヤーだけという時代になるかもしれない。
【中頁から】
【2015年10月28日の東京ビッグサイト・タクシーの列】
セドリックとクラウンが殆どのこの見慣れた光景も2020年に東京オリンピックが行われる頃には様相が一変しているかもしれない。
【2015東京モーターショー 日産車体 一般配布カタログとプレスキット】
日産車体のプレス用オマケは前回2013年のモーターショーと同じガンメタのトミカ1/69スケールNV350。ランチの会場で顔を合わせた、私がミニカー好きであることを知っているプレスの知人から戴いたものを含めて今回だけで3台。しかし、このミニカー、元々タダで戴いたものをヤフオクで3000~6000円程度で転売しているプレス入場の人が大勢いるのは嘆かわしい。
★日刊自動車新聞社 創刊85周年展示
1929年(昭和4年)2月21日創刊の日刊自動車新聞は2014年に創刊85周年を迎えた。日刊自動車新聞社は東京モーターショーの前身である国産自動車展示イベントを1932年(昭和7年)より主催し、戦後1954年(昭和29年)に自動車工業団体にイベントの開催権を譲り第1回モーターショーが開催されて現在に至っている。
この85周年展示ポスターの中で目を引いたのは創業時の社屋前に並ぶ小さな1つ目の自動車達。調べてみると1920年代のドイツ車ハノマーク2 10Ps(Hanomag: 軍用車でも有名)のようだ。都内等の取材で走り回ったのだろうか。ハノマークの輸入元や日本語版カタログが当時発行されたかどうかは不明。
★2015東京モーターショーで販売されたミニカー
・三菱ふそう・・・1/43スケール1932年B46型バスの5400円は格安。
・日野・・・セレガ24800円ほか。
・いすゞ新型ギガ・・・実車デビューと同時のリリース
・マツダ
・トヨタS-FR・・・京商制作レジン製、限定500台(税込1万円)。
・ニッサンGT-R(R35)
トミカプレミアム2種・・・1台1080円ながら長蛇の列に並ぶ気合いがないと入手不可能。
限定トミカ12種
★自動車ガイドブック 第62巻 2015~2016
税込定価1200円。424頁+α。今年の東京モーターショーは、いすゞ以外にも過去を振り返る印刷物が多くみられ、1954年の第1回ショーから数えて2014年に60年を超えたことから、日本自動車工業会発行の自動車ガイドブックVol.62では総頁数424頁+の1/3に近い130頁程が「東京モーターショーと日本の60年」と題する歴史記事となっているほか、1935年の日本デイゼル工業創立から数えて80周年となるUDトラックスの一般配布用モーターショーカタログでも6TW等の古い車両写真と共にその歴史を掲載しており大変興味深い。特にこの自動車ガイドブックは東京モーターショーの過去全てのショーの鮮明な写真やトピックと共に入場者数、会場面積、入場料、ポスターの写真及び作者(第1回および第2回は作者記載なし=作者不詳?)、過去全ての自動車ガイドブックの表紙や販売価格といったデータも掲載されており日本車の歴史に多少でも関心のある向きには必携の書と言える。国産の消防車や救急車を含む4輪・2輪がほぼ網羅され各販売会社の名簿も付いた自動車ガイドブックはモーターショー会場だけでなく全国の書店でも売られ伝統的に通常の書籍と比べ格安で販売されてきたが、過去60年の歴史資料が満載の最新号の税込1200円はこれまで以上に破格のバーゲンプライスといえる。
第62巻に掲載された1954年4月、日比谷公園での第1回ショーのオオタPHの鮮明なカラー。60年以上前の第1回から車両の展示にはコンパニオンが花を添えていたことが判る。2015年現在で61年の時を経ているので仮にオオタの横のコンパニオンの女性が当時20歳としても現在は80代となられているだろう。
★オマケ(その1): 2015東京モーターショーの美女 パートⅡ
あくまで個人的な視点からのピックアップです。
川島なお美似?
パートⅠにも登場の美女
★オマケ(その2): いすゞ自動車特注 1/43スケール 2015年いすゞ新型GIGA
全長28cm。ダイキャスト製。会場価格9800円。500台限定のトヨタS-FRよりこちらの方が遥かにそそられて1台購入。箱に「TOKYO MOTOR SHOW 2015」と印字されているのもポイントが高い。
半世紀の時を経た1965年ベレット1600GTとのツーショット
いすゞミニカー色々・・・ギガと一緒に写っているのはエブロ1965年いすゞベレットGT、エムテックいすゞエルフ佐川急便(旧塗装)、中央道のPA売店で最近購入した中国製エルフWキャブ高所作業車(左ハンドル)。
★オマケ(その3): 書籍「ニッサン セドリック/グロリア」
モーターショー会場で購入した書籍1冊目。2015年12月26日三樹書房発行。定価4500円(税抜)。初版限定1000部全国配本。著者は三樹書房よりメーカー別にヒストリーを追った著作を精力的に世に出している元富士精密(プリンス)~日産自動車所属で自動車史料保存委員会の当摩節夫氏(1937~)。グロリアについては双子車となった230以降のみを掲載。編集作業中にセドリックが生産中止となり奇しくもセドリック54年の生涯を纏め上げた形の書籍となった(今後、セドリックの車名が復活する可能性もゼロではないが)。214頁もの労作で本の厚さは2cm位ありズッシリと重い。簡易カタログまでの全ては網羅されていないにしても珍しい輸出用カタログや営業車カタログも掲載されている上、カタログの顔とも言える表紙写真の掲載を原則としているため、セドグロ・ファンは勿論、自動車カタログ収集家のための資料ともなり得る1冊。
★オマケ(その4): 書籍「キューバの自動車図鑑」
モーターショー会場で購入した書籍2冊目。2015年9月25日ぽると出版発行。定価1700円(税抜)。著者はバス研究の国内第一人者として著名な和田由貴夫氏。戦前から1950年代あたりのアメリカ車が文字通りウジャウジャ実働している現代のキューバで写した自動車達の驚愕の写真集。特に1950年代のアメリカ車に興味がある向きは必見。代替車がないという事情から古いクルマが知恵と創意工夫によって実用として使われ続けているためメーカーオリジナルを保っている車両は少ないが、今後アメリカとの国交回復と共に年式の新しいクルマが大量に流入し、この本に出ているような古いクルマ達が絶滅してしまう前にキューバに行きたい衝動に駆られる人も多いはず。
この本の冒頭には自動車歴史研究の第一人者であった五十嵐平達氏の愛弟子である和田氏が五十嵐氏との縁が生れた経緯も記されており、1924年生まれの五十嵐氏と1953年生まれの和田氏という親子程も歳の離れた子弟関係は少々不思議だっただけに非常に興味深い。けっして和田氏は著述のメインとしてきたバスだけが好きな訳ではなく、五十嵐氏と同様に自動車全般に深い愛着/愛情をもっておられることがよく判る1冊でもある。
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★2015年いすゞギガ 21年ぶりのフルチェンジ 東京モーターショー~自動車カタログ棚から292
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