★10月も下旬が近くなっていますが今日の東京は半袖でも過ごせるくらいの陽気でした。とはいえ、室内でエアコンが必要な程の暑さでもなく今くらいが一番良い気候なのでしょうか。
旭化成建材が基礎工事を手抜きしたためにマンションが傾いたことがニュースになっています。確かにウン千万出して買ったマンションが欠陥だったら誰でも困ります。この件では旭化成株も暴落しているようです。
★自動車には、セダン、スポーツカー、近頃流行のワンボックスタイプのミニバン、トラック、バス、重機系など色々あります。セールスカタログはショー展示用の試作車でもない限り販売された自動車には殆ど例外なく存在すると思われます。私は1960年代以前の日本車のカタログについては上記のカテゴリーを問わず基本オールラウンドに収集しています。自分が子供だった時代の日本の空気に包まれていたいという気持ちが収集に繋がっているという気がします。一番好きなクルマは何?と聞かれれば、個人的にはやはりポルシェ(356やナロー911などの年代物)ということになるのですが、カテゴリー的にはバスも大好物です。但し、私は月刊誌を読む程のバスマニアという訳でもないので、知識は殆どありません(汗)。
自動車好きと一口に言ってもバスにはあまり興味のない人が多いと思いますが、今日は「自動車カタログ棚から」シリーズ第289回記事として1950年代の民生デイゼルのリアエンジンバス「コンドル号」をピックアップします。
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★世界最初のリアエンジンバスはアメリカのイエローコーチ(Yellow Coach Manufacturing Company)が1932年(昭和7年)にデビューさせたモデル700(WB5400㎜)、次いで同社が1940年(昭和15年)にデビューさせた現在では俗にオールドルック・トランジットバスと言われるフレームレス・モノコック構造の車両が近代的なリアエンジンバスの嚆矢となった。
極東日本にも戦後、進駐軍の手によりこのGMC製リアエンンジンバスが上陸した。当時、東京都交通局の技術者であった今村次郎氏はリアエンジンバスこそバスの理想の姿であると確信し、1949年(昭和24年)1月に富士重工(当時の社名は富士産業)と東京都交通局との間でリアエンジンバス試作についての契約が為され、同年8月に完成したのが産業遺産として保存されている有名な「ふじ号」である。ふじ号は東京都が富士重工に供給した民生UD2型エンジンといすゞBX91のシャシーパーツを用い1台のみのワンオフで製造された。
★ふじ号の経験を活かし、1950年(昭和25年)に富士重工と民生ディゼル工業が手を結んで開発・デビューさせたのが本格的なアングルドライブのリアエンジンバス「コンドル号」であった。
中島飛行機をルーツとする富士重工が航空機製造の技術を存分に活かし車体外板により強度と剛性を持たせるモノコックボディを製造し、独クルップ・ユンカース(Krupp-Junkers)式対向ピストン3気筒直接噴射式の民生KD3型90psエンジンを搭載して完成したのが民生コンドル号であった。エンジンはクランク軸が車体の前後方向と直角で70°のアングルドライブを介して後輪を駆動した。車両型式は全長10400mmの前扉車がBR30、全長9350mmの中扉車がBR31である(ホイールベースは何れも5300mm)。
今回は手元のカタログ棚から「コンドル」名称の民生リアエンジンバスを駆け足でご紹介します(フレーム付き新日国ボディの「イーグル」等、「コンドル」以外の車両については別項でご紹介予定)。
【主要スペック】 1957年 民生リアエンジンバス6RF100「コンドル号」
全長10920㎜・全幅2450㎜・全高3000㎜・ホイールベース5500㎜・車重7770kg・RR・UD6型水冷2サイクル直接噴射式6気筒7410cc・最高出力230ps/2000rpm・最大トルク90kg-m/1300rpm・エンジン重量880kg・電装系12V・乗車定員77名(ロマンスシート:座席49・立席26・乗務員2)・最小回転半径10000mm・タイヤ10.00-20-14PR・最高速度120km/h(高速型トランスミッション仕様)
●民生デイゼル工業 広報誌「デイゼルニュース」第36号 1953年5月号 表紙 (B4判)
1953年4月21日発行。表紙のコンドル号の前には俳優 根上 淳(1923年9月20日-2005年10月24日)と女優 久我美子(1931年1月21日-)。映画撮影中のスナップと思われる。
●1950年 民生デイゼル工業 リアーエンジンバス「コンドル」BR30型/BR31型 専用カタログ (B5判・2つ折4面)
カタログNo.:印字なし。恐らく最初の民生コンドルのカタログ。表紙はリアエンジンであることを強調した写真。開いたエンジンカバーの下に「-Frameless Body- Fuji Sangyo Koizumi Fact.」(フレームレスボディー 富士産業小泉工場)の印字があることに注意。富士重工特有の凹んだフロントウインドは模範としたGMC製バスとも似ている。
【中面から】
BR31型
BR30型
裏面: スペック
●1951年3月 民生デイゼル工業 リアーエンジンバス「コンドル・ジュニア」BR20型 専用カタログ (縦15×横21cm・4つ折8面)
カタログNo.110。WB5.3mのコンドルでは大き過ぎて使いにくいケース向けの普及型で全長8680㎜/全幅2300mm/WB4200㎜というサイズ。ロマンスシート58名乗り、最高速度66km/h。搭載エンジンはKD2型2724cc60ps。
【中面から】
図面
エンジンルーム
客室。アメコミ風イラストは進駐軍の影響と思われます。
スペック
●1952年7月 民生デイゼル工業 リアーエンジンバス「コンドル」BR351型 専用リーフレット (A4判・表裏2面)
カタログNo.132。全長8900mm・WB4300㎜・105ps・58名乗り。中型バス。
裏面: スペック&図面
●1952年8月 民生デイゼル工業 リアーエンジンバス「コンドル」BR324型 専用リーフレット (A4判・表裏2面)
カタログNo.134。全長9500mm・WB5300㎜・105ps・66名乗り。
裏面: スペック&図面
●1952年12月 民生デイゼル工業 リアーエンジンバス「コンドル」BR331型 専用リーフレット (A4判・表裏2面)
カタログNo.142。全長9600mm・WB5000㎜・105ps・64名乗り。
裏面: スペック&図面
●1954年3月 民生デイゼル工業 リアーエンジンバス「コンドル」BR331型 専用リーフレット (A4判・表裏2面)
カタログNo.171。基本的には上掲の52年12月発行のBR331リーフレットの色替え版で全長やWBは同じ。子細に見比べるとエンジン出力が105psから120psにアップしている。
●1954年3月 民生デイゼル工業 リアーエンジンバス「コンドル」BR344型 専用リーフレット (A4判・表裏2面)
カタログNo.172。全長8650mm・WB4440㎜・120ps・58名乗り。中型バス。
裏面: スペック&図面
●1955年4月 民生デイゼル工業 リアーエンジンバス「コンドル」RF型 専用カタログ (A4判・2つ折4面)
カタログNo.197。掲載型式はRF95(WB5300㎜)・RF90(WB5000㎜)・RF85(WB4440㎜)・RF80(WB4300㎜)の4種。小型で高出力のUD4型2サイクル4気筒4940cc150psエンジンを搭載したモデル群。
【中面から】
透視図
RF85型中扉の都バスの手前にはダットサンデラックスセダン、右手奥の信号待ちの車列にはダットサンスリフトが見える。
RF80型
RF95型
エンジンルーム
スペック
●1956年9月 民生デイゼル工業 リアーエンジンバス「コンドル」RF100型 専用カタログ (A4判・2つ折4面)
カタログNo.227。掲載型式は6RF100(UD6型6気筒230psエンジン搭載)と4RF100(UD4型4気筒150psエンジン搭載)の2種。サイズは何れも全長10920mm・全幅2450㎜・全高3000㎜・WB5500㎜という大型バス。6RF100は当時、萬代屋(現バンダイ)がモデル玩具として発売した(オマケ1参照)。
【中面から】
UD6型エンジン
図面
スペック
●1956年9月 民生デイゼル工業 リアーエンジンバス「コンドル」RF81/91型 専用カタログ (A4判・3つ折6面)
カタログNo.223。掲載型式はRF81(全長8960㎜・WB4300㎜)とRF91(全長9660㎜・WB5000㎜)の2種。搭載エンジンは何れもUD4型4気筒150ps。このカタログから表紙には民生に加えて日産の商標が入り、日産民生ヂーゼル販売の発行となった。運転席を描いた印象的な表紙。
【中面から】
運転席、客席、エンジンルーム
裏面: スペック
●1957年4月 民生デイゼル工業 リアーエンジンバス「コンドル」RF81/91型 専用カタログ (A4判・3つ折6面)
カタログNo.233。上掲の1956年9月発行RF81/91型 専用カタログの改訂版で表紙以外は基本的に同一だが、子細に見比べるとUD4型エンジンの出力が165psにアップしている。
●1960年8月 民生デイゼル工業 リアーエンジンバス「コンドル」4R103 /4R93/4R92型 専用カタログ (A4判・3つ折6面)
カタログNo.284。掲載型式は4R103(WB5300㎜)・4R93(WB4850㎜)・4R92(WB4650㎜)の3種と各々のエアサス仕様車。搭載エンジンは何れもUD4型165ps。デビューから10年を経たコンドル。
【中面から】
4R103型
4R93型
4R92型
★オマケ(その1): 萬代屋(現バンダイ) 530番 1/43スケール 1957年民生デイゼル・リアエンジンバス「コンドル号」6RF100型
全長25.5cm。当時定価:不明。ブリキ製。フリクション動力入り。カラーバリエーションは画像の緑系ツートンの他に白/オレンジ、草色等。輸出用の仕様違いも出ている。恐らく国産初のバスのスケールモデル。ミンセイ6RF100型がほぼ正確に1/43にスケールダウンされている。室内のシートが背面だけのブリキ板ではなく立体的に造り込まれているほか、エンジンルームのメッシュなど細部まで大変手間のかかった傑作モデルで1957年の第4回東京モーターショー(当時の正式名称は全日本自動車ショー)では民生ブースの記念品としても配布された。萬代屋の赤函シリーズによく見られる黒地にシルバーのプリントがされたシャシーにはエンジンも描かれ、シャシー中央には「UD6型230馬力ジーゼルエンジン」と印字されている。当時ヒット商品であったバンダイ赤函シリーズの中では比較的市場に出てこないモデルのひとつ。
UDとMINSEI‐FUJI(民生-富士重工)のエンブレムは別パーツ
メッシュの入ったエンジンルーバー
UD6型230馬力の文字やエンジンがプリントされたシャシー
★オマケ(その2): 書籍「日本のバス 1982」
1981年(昭和56年)10月20日印刷、12月1日九段書房発行。当時定価2300円。モータービークル創刊30周年臨時増刊号。企画・構成は日本の自動車史研究の第一人者であった五十嵐平達氏の愛弟子で現在はバスラマで有名なぽると出版を主宰し日本のバス研究の第一人者でおられる和田由貴夫氏。和田氏は2003年に発行された富士重工業のバス達(オマケ3参照)の中でこの本について触れ、「素人の手作りムック」などと謙遜されているが、五十嵐平達氏が箱根富士屋ホテル直営のバス路線について「箱根のFUJIYA GARAGE」と題して15頁に亘る記事を書かれていること、極めて貴重な富士重工保存写真を和田氏が解説した「富士重工のアルバムから1946~1981」と題する45頁にも及ぶ記事が掲載されていることなど、日本のバス研究書としては第一級といえる名著。ミニカーショップイケダで有名な池田直治氏が日本バス研究会会長の立場で研究会についての紹介文を数頁書かれており、この本が出された当時20代の初めだった私は日暮里のイケダにミニカーを買いに行った際に見かけて購入し、内容の奥深さ、面白さに猛烈な衝撃を受けた。この本が出された際、和田氏がまだ20代だったことには驚くほかはない。今回ピックアップしたミンセイ・コンドル号についてもこの本では実車写真が見られる。
五十嵐平達氏のフジヤガレージの記事
★オマケ(その3): 書籍「富士重工業のバス達」
2003年(平成15年)9月20日 ぽると出版発行。定価:税抜8000円。2003年3月で富士重工業がバス製造から撤退するに際してオマケ2を著した和田氏が富士重工保存写真を中心に1946年(昭和21年)11月からの57年の歴史を纏めた一冊でオマケ2との重複もあるが今回ピックアップしたミンセイ・コンドル号についても多数の実車写真が見られる。
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★1957年 ミンセイ・コンドル号 初期のリアエンジンバス ~ 自動車カタログ棚から 289
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