★今日は建国記念の日です。
日本書記には神武天皇が即位して日本国を統一したのは紀元前660年2月11日と記されており、しかし神武天皇は現在の歴史学上においては実在の人物ではなく、あくまで神話の世界の人物とされているが、1872年(明治5年)に日本政府は神武天皇即位の2月11日を国民の祝日「紀元節」として制定した。戦後、1948年(昭和23年)に日本の右傾化、国粋主義を憂うGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)の意向により国民の祝日からは除外された。
ところが、その後、自民党を中心とする保守勢力から紀元節を復活させようという動きが高まり、社会党など反対する動きを抑えて1967年(昭和42年)に「建国記念の日」として復活した。「建国記念の日」が「建国記念日」ではないのは、正確な史実に基づく建国した日ではなく日本が建国された事実自体を記念する日であるためと解釈されている。
戦時中の1940年(昭和15年)、ちょうどジョン・レノンの生まれた年は紀元2600年に当り、国を挙げての祝賀行事が行われたが、今年2015年は紀元で数えると2675年ということになる。
このように建国記念の日については明治時代からの複雑な経緯があり、特に太平洋戦争を体験した世代には戦前の暗黒時代の紀元節を想起させる建国記念の日に嫌悪感を感じられる方が今でもいらっしゃるようです。国粋主義者=右翼ではない私としても素直には祝えない面もあるのですが、理由はどうあれサラリーマンや学生にとって休みが多いことは嬉しいものです。特に今年のように水曜日が祝日に当ると、前後2日ずつ月火と木金だけ頑張れば後は休みというのは嬉しいパターンではないでしょうか。毎週土日以外に水曜が休みだといいなあと思います(>_<)
★ご心配をおかけしました怪我の件は事故から5日が経ちお陰様で化け物のような顔の腫れが少しずつですが引いてきています。
化け物つながりという訳でもないのですが、今回の自動車カタログ棚シリーズの記事は奇怪な容貌の「アキツ三輪トラック」をご紹介します。もはや歴史の闇に消え去りつつある国産車の一つです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
★1920年(大正9年)、川西財閥の川西清兵衛(1865年9月7日-1947年11月19日)は中島飛行機の技術者を引き抜き川西機械製作所・飛行機部を設置した。1928年(昭和3年)には川西航空機株式会社として独立し、戦前、多数の航空機を製造した。
九四式水上偵察機(1934年)、九七式飛行艇(1936年)、二式飛行艇(1941年)、川西 N1K1 強風(1942年)、要撃機・局地戦闘機「紫電」(1942年)、局地戦闘機「紫電改」(1944年)、水上偵察機「紫雲」(1943年)といった大日本帝国海軍の名機は川西航空機が製造した。
★1966年(昭和41年)に日産自動車と合併したプリンス自動車が立川飛行機、富士重工業が中島飛行機をルーツとするように、戦後、三輪トラック「アキツ号」を生産した明和自動車工業も戦前の航空機産業からの民需転向組であり川西航空機がそのルーツであった。
川西航空機は終戦の翌年1946年(昭和21年)に明和興業となり民需平和産業への転換としてオート三輪、オートバイの生産を開始した。終戦後の産業を早期に再建すべく施行された企業再建整備法により1949年(昭和24年)11月には、オート三輪の生産を中心とする「明和自動車工業」とオートバイの生産を中心とする「新明和工業」とに分社化され、新明和工業はオートバイ「ポインター号」のヒットにより二輪の世界ではメジャーなメーカーとなった。
★一方、オート三輪「アキツ号」を生産した「明和自動車工業」は4サイクルSV空冷単気筒670ccエンジンで出発し、他社同様1952年頃まではオートバイの後輪を2軸にしただけのようなスタイルの屋根なしバーハンドル車、その後、排気量の拡大とルーフ付の1つ目ヘッドライト車、ルーフ付の左右2つ目ヘッドライト車といった進化を遂げた。
1954年(昭和29年)3月には空冷OHV1500cc45psのその時点では三輪最大のエンジンを搭載したF6型2つ目ヘッドライト車を市場投入するも販売は低迷し、1955年(昭和30年)6月には本拠地・西宮鳴尾工場が閉鎖された。トヨエースがオート三輪を駆逐する以前の三輪全盛期の中で息絶えたのだった。マツダ、ダイハツ等の主要なオート三輪が丸ハンドルに移行する以前に生産を終えたアキツには丸ハンドル車は存在せず全てがオートバイと同じ仕組みのバーハンドル車であった。
川西航空機の流れを汲むとはいえ大資本のバックがないままに残された技術者達だけで不器用ながらも必死に生産されたアキツは新製品の開発体制や生産設備、そして販売力の点でも他社に大きく引き離されていた。現在の目で見ると奇怪にも見えるその外観デザインは、デザイン以前のデザインと言えるものであり、見た目だけでもユーザーの理解が得にくく販売不振の一要因となったようにも思える。
工場閉鎖後は取引銀行であった三和銀行とダイハツが折半出資して「旭工業」として再出発し、1957年(昭和32年)以降はダイハツ・ミゼットが生産され、1970年(昭和45年)に旭工業はダイハツ工業に吸収合併されて現在はダイハツ西宮工場となっている。
アキツの車名の由来は不明なのだが、トンボの古語=「秋津」だろうか。
【主要スペック】 1955年アキツF6S型 三輪トラック (1955 Akitsu 3Wheel truck typ.F6S)
全長4355㎜・全幅1730㎜・全高1850㎜・ホイールベース2870㎜・車両重量1360kg・F型強制空冷直列2気筒OHV1450cc・最高出力45ps/4500rpm・最大トルク9.5kgm/2000rpm・変速機4速MT・最大積載量2000kg・乗車定員1名・最小回転半径4210㎜・燃費13km/L・最高速度70km/h・販売価格:不明(調査中)
●1955年 アキツ K8型 三輪トラック 本カタログ (B5判・2つ折り4面)
1955年4月発行。カタログNo.801。西宮鳴尾工場が閉鎖となる2ヵ月前の発行。10年近く生産販売されたアキツのカタログは恐らく相当な種類があったと思われるが、あまり残っておらず手元のカタログ棚にあるのは1954年から1955年にかけてのアキツ末期の6部のみ。これは明和自動車が最後の力を振り絞って発行したとも思わせる秀逸なカラーカタログ。K8型は905cc2気筒30psエンジンを積んだベースグレードで積載量は1トン乃至1.25トン。闇夜に奇怪な顔を出した魅力的な表紙。ロンパリの目玉と中央にはアキツとカタカナで記されたエンブレム。このようなロンパリのフロントデザインは他社の三輪でも見られたがアキツの顔は抜きん出て迫力がある。このクルマが闇夜に迫ってきたら、ちょっと怖いかもしれない。表紙下部の明和自動車工業株式会社の下には括弧書きで旧川西航空機と印字されている。
【中面から】
「最高級品で大衆に奉仕する」のコピーも工場封鎖間近の発行だけに虚しい。
文章部分アップ
裏面: シャシー&スペック
K8型はホイールベース2585㎜のK8SおよびK8SA(三方開荷台車)とホイールベース2745㎜のロングバージョンK8LおよびK8LA(三方開荷台車)の4種類。
●1955年? アキツ K8型 三輪トラック 簡易カタログ (B4判・両面印刷1枚)
発行年月、カタログNo.: 記載なし。
裏面: 「アキツK8型に関する十二章」と題して強制空冷エンジンやセルモーター付であることなどを記載。
●1955年 アキツ三輪トラック 総合カタログ (B5判・片面印刷1枚)
1955年4月発行。カタログNo.681B。1500cc45psのF6型と最晩年に投入された900cc30psのK8型およびレッカー等の特殊車各種が印字されている。総合カタログといってもペラペラの薄紙に片面印刷のフライヤー(チラシ)。
●1954年 アキツ F6型 三輪トラック 簡易カタログ (B4判・片面印刷1枚)
1954年3月発行。カタログNo.: 記載なし。
●1954年? アキツ 三輪トラック 総合カタログ (B5判・両面印刷1枚)
発行年月、カタログNo.: 記載なし。表面は1500cc45psのF6型で「新型」と印字があることから、F6型がデビューした1954年の発行と思われる。
裏面は「企業の能率と発展のために驚異的性能を誇るアキツ号三輪トラックを」のコピーと共にF-5L型(長尺1500cc2トン車)、F-5S型(短尺1500cc2トン車)、F-6型(1500cc1.5トン車)、ベース車種のC-33型(単気筒850cc1トン車)の4車種を掲載。
●1955年 アキツ F6型 三輪トラック 本カタログ (B5判・2つ折4面)
1955年5月発行。カタログNo.602。西宮鳴尾工場が閉鎖となる1ヵ月前の最末期の発行。これも表紙下の明和自動車工業株式会社の下に括弧書きで旧川西航空機の印字がされており、如何に戦前の川西航空機に誇りを持っていたかが判る。
表紙下部に括弧書きで旧川西航空機の印字
【中面から】
標準車「F6S」、長尺車「F6L」、F6Lをベースとした「F6高床三方開」および「F6低床三方開」
「F6土砂用ダンプカー」、「F6塵芥用ダンプカー」、「F6真空吸排式糞尿車」(バキュームカー)、「F6電気工事作業車」(レッカー車)
裏面: 強制空冷F型1500ccエンジン等の解説。このカタログはどういう訳かどこにも車両のスペックが掲載されていない。
★オマケ(その1): テレビアニメ 「怪物くん」 (1968年オリジナル版)
1968年4月21日~1969年3月23日にTBS系で放送されたオリジナルの白黒版。子供の頃に見た懐かしいアニメの一つ。不二家のペコちゃんも登場。こうして見ると怪物も可愛いものです。
★オマケ(その2): HOTWHEELS ポルシェ934ターボRSR
激レア車である上に知名度も低いアキツ三輪トラックにはミニカーなどのミニチュアは全く存在しない。今後も造られることはないだろう。ミニカーのオマケが全く付かないのは寂しいかも。
ということで、、、「そんな本日のホットウィール 」
↧
★1955年 アキツ三輪トラック 川西航空機の怪物 ~ 自動車カタログ棚から 255
↧