★今日は所用で湘南方面に出かけたのですが、新宿から乗るつもりでいた小田急ロマンスカーが大雨のため運休していました。雨で気温が一気に下がり、梅雨寒というのでしょうか、ほんの数日前の暑さが嘘のように涼しく半袖で外を歩くのは寒い1日でした。湘南の海はどんよりした雲がたちこめ暗い色を帯びていました。。
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★かつてオート三輪の主要メーカーであった東洋工業 (現マツダ)は、1957年にデビューして大ヒットした軽三輪ダイハツ・ミゼット(本シリーズ第85回記事および第171回記事参照)の対抗車種として1959年(昭和34年)5月に軽三輪トラック「マツダK360」をデビューさせたことについては既に第92回記事で御紹介した。
★マツダK360は4ストローク OHV 2気筒エンジンを運転席背後下のミッドシップに搭載し陸のモーターボートの如く走行安定性が良いことを大きなセールスポイントとしていた。ボディ・デザインは同時期のマツダ三輪各種、ロンパー(後のDシリーズ)、マツダ初の乗用車R360クーペ等を手がけた小杉二郎氏(1915~1981)によるもので、小杉氏のほかの作品同様にチャーミングで可愛らしいものであった。
果たしてマツダK360は大ヒットし、ダイハツ・ミゼットMP型と並ぶ1960年代の軽三輪トラックの巨頭として日本中の町や村に溢れかえったのである。
★K360のボディを若干大きくし600cc20psエンジンを搭載した「マツダT600」がK360より一月遅れの1959年(昭和34年)6月にデビューした。
軽自動車枠を超えるT600には軽の恩恵(税金・専用免許等)はなかったものの、K360の2倍近い20psのパワーと200kg増しの500kgの積載量を持つ兄貴分として併売され、1969年(昭和44年)3月までの10年間に亘り生産が続けられた。そして、1960年代の終焉と共にその生涯を終えた。K360の生産台数は28万台と言われるが、T600の生産台数は正確な統計が見つからないものの軽の恩恵を受けて大ヒットしたK360に比べると一桁少なかったようだ。
今回はそのマツダK360こと「けさぶろう」の兄貴分たる「マツダT600」のカタログをご紹介します。
【マツダT600 主な変遷】 (基本的にはK360に準じる)
(1) 1959年6月 マツダT600発売 (K360との外観上の識別点はメッキのヘッドライトリム、若干長いリアオーバーハング、13インチホイール)
(2) 1959年10月? サイドウインドを引違い式に変更
(3) 1960年4月? ホイールベースを2150mm、全長を3295㎜に延長、リア・ブリスターフェンダー採用・フロントバンパー追加
(4) 1962年3月 シートを30mmのフェルトから100mmのウレタンラバーをビニールレザーで包んだタイプに変更、荷箱の鉄板厚を1mm厚に変更、キャビン背面の材質を合板から鉄板へ変更
(5) 1962年8月 マイナーチェンジ
引きちがい式だったドアウィンドウを上下4段階のスライド式に変更・三角窓とフロントサイドベンチレーター新設・ホーンボタンをハンドル中央に移設(ハンドル形状変更)・ウィンカーレバーをハンドルコラムに移設・ライトスイッチのデザイン変更・ドアヒンジの板厚を16mmから23mmに変更・ボディー外板標準色を変更グレー/ブルーに変更
(6) 1964年1月 マイナーチェンジ
全長を3300mmに5mm延長・キャビンのルーフの幌製キャンバスを鋼製化・クラッチペダルおよびブレーキペダルを吊り下げ式に変更・内張りをレーザー付きウレタンに変更・助手席をフォールディング式に変更・灰皿追加・ルームランプ追加・助手席ハンドレスト追加・テールランプを上下2段分割形状に変更・スピードメーター・デザインおよび取り付け位置変更・スピードメーター・ケーブルの取り出しをミッションに変更・リアのリーフスプリングを7枚から8枚に強化変更・ブレーキオイルのリザーブタンクの位置変更・ボディー外板標準色を ポーターホワイト/ラビットグレー(薄灰色)に変更
(7) 1969年3月 生産中止 (販売は10月まで)
【主要スペック】 1959年 マツダT600 (1959 MAZDA T600)
●車両型式: TEA45 ~ TEA55(1960年以降)
※注:カッコ内はK360の数値、カッコ書きなしは両車共同一、1960年以降は全長3295㎜・ホイールベース2150mmに延長。
全長3125(2975)mm・全幅1280mm・全高1440(1430)㎜・ホイールベース2060mm・後輪トレッド1060mm・車重510(485)kg・荷箱長1330(1180)mm・強制空冷OHV4サイクルV型2気筒577(356)cc・最高出力20ps/4300rpm(11ps/4300rpm)・最大トルク3.8m-kg/3000rpm(2.2m-kg/3000rpm)・乗車定員2名・最大載載量500(300)kg・最高速78(65)km/h・販売価格28万5000円(23万円)
●1960年4月? マツダT600 ポスタータイプカタログ (縦72×横51cm・8つ折)
ホイールベース、全長を延長してリアがブリスターフェンダーとなった際の珍しいポスタータイプ・カタログ。この時期のマツダ車ではT1100、T1500、D1100、B360などでも同様の拡げるとポスターになるタイプのカタログが発行されている。T600のカタログは写真で構成されたものばかりでイラストが使われているのはこのカタログのみ?
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拡げた状態。72×51cmもあり額装して飾って楽しめる。
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ライトバン、トランク型、幌型のバリエーション
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中面から
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トランク型と幌型のリア。トランク型のリアエンドはプレスが全く異なりテールライトも丸いパーツが付いている。
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室内で微笑む女性
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三面写真&スペック
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●1959年6月 マツダT600 専用カタログ(A4判・2つ折)
表紙の背景の商店に「皇太さま 正田美智子さま おめでとう」の文字が入った、今上天皇が御成婚された際(今上天皇の結婚の儀は1959年4月10日)の垂れ幕があることに注意。最初期型はサイドウインドがガラスではなく、取り外し式の透明ビニール製?三輪にはエアコンはおろかヒーターもなかった時代のこと、もしサイドウインドがガラス製のはめ殺しでは夏冬はとても乗れなかったはず。また、この最初期型ではボディ右サイド中央の換気スリットに注油孔があり、ドアには鍵も付いていないことが確認出来る。リアのホイルキャップも最初期のみのデザイン。ヘッドライトリムは初期のK360とは異なりクロームメッキが奢られている。
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中面から
標準型・幌型・トランク型。トランク型はリアのプレスが異なり傾斜している。
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強制空冷OHV4サイクルV型2気筒577ccエンジン
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裏面: 図面&スペック。図面のリアナンバーには西暦を示す「1959」の印字。
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●1959年10月? マツダT600 専用カタログ(A4判・2つ折)
サイドウインドが引違い開閉式となり、ドアノブ下には施錠用の鍵穴が付いた。まだリアはブリスターフェンダーではなく、フロントバンパーも付いていない。この時点まではリアオーバーハングが長いこととヘッドライトリムがクロームメッキであること位しかK360との外観上の相違はない。
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中面から
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幌型とトランク型のリアスタイル。トランク型はリアのプレスのみならずテールライトも異なる。
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V型2気筒577ccエンジン
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キャビンと追加されたドアキー
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裏面: 図面&スペック
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図面アップ: このカタログでもリアナンバーは「1959」の印字であることに注意。
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●1960年4月? マツダT600 専用カタログ(A4判・2つ折)
ホイールベースおよび全長を延長し、リアがブリスターフェンダーとなりフロントバンパーが付いた。ニューモデルの印字があるのでポスタータイプのカタログと同じ時期の発行?トランク型のリアプレスが他車種と共通のものに修正されているので、発行はこちらが少し後かもしれない。
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中面から
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住宅街のK360。道路が未舗装であるところが昭和30年代らしい。
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トランク型・幌型・ライトバンのリアビュー。トランク型も他車種と同一プレスとなった。
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●1960年10月? マツダT600 専用カタログ(A4判・2つ折)
この時期のK360やT600のカタログは車両自体には変更がないまま頻繁に変更されているが、何れも発行年月の印字がなく正確な発行時期は不明。
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中面から
上方からの俯瞰写真。ミニマムなK360に比べて荷台が長いことが分かる。
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各部の解説
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裏面: 図面&スペック
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●1961年? マツダT600 専用カタログ(A4判・2つ折)
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キャビン内部
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ミッドシップ構造がよく判る透視図ほか
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裏面: 図面&スペック
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●1961年? マツダT600 専用カタログ(A4判・2つ折)
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中面から
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各部のディテール。ワイパーは運転しながら手動で回すという原始的な三輪も多かったため、ワイパーが電動であることもアピールされている。
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裏面: 図面&スペック
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●1962年8月 マツダT600 専用カタログ(A4判・2つ折)
サイドウインドに三角窓が付き、フロントサイド下部にはベンチレーターも付いた。ルーフは未だ幌貼り。
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中面から
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キャビン内部
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荷箱
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ヘッドライト&ドアロック。ドアロックは左側は内側から施錠し、右側(運転席側)のみ外から施錠出来る構造。
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●1964年12月 マツダT600 専用カタログ(A4判・2つ折)
ルーフがスチール製となり、全長も若干伸びた最終型。手元にあるT600のカタログの中では最も魅力的な情感溢れる表紙。狭い小路を走り来るT600。このカタログの後、1969年まで記録上は5年弱も造られているが1960年代後半に新たな専用カタログが発行されているのかどうかは不明。K360も1960年代後半に発行された専用カタログが見つからないことから、もしかすると三輪の時代も終焉が近づき殆ど受注生産の形となったため新たなカタログは発行されていないのかもしれない。
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中面から
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鋼製化されたルーフと広い荷台が分かる写真
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裏面: 図面&スペック
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★オマケ(その1): エブロ 1/43スケール 1962年 マツダT600
2011年2月発売製品。品番44006。定価税抜4300円。ダイキャスト製。三角窓が付いたものの未だ幌ルーフ時代のモデル化。K360は当時モノのモデルカーも多いが(上記でリンクしている第92回記事参照)、T600には当時モノのミニチュアは存在しない。近年、トミーテックからもHOスケールのT600が出ている。
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★オマケ(その2): 両さんのマツダT600
こちら葛飾区亀有公園前派出所(こち亀)は旧車やマニアックなクルマ達が多数登場することでも有名ですが、1991年7月15日初版発行の第70巻掲載「激走!模名古村三輪レース!!の巻」では両さんがマツダK360のパワーアップ版たるマツダT600で第1回模名古(モナコ)村グランプリ・チキチキマシン三輪バタバタレースに参戦します。K360とT600が描き分けられているのも凄いです。この1話は三輪マニアならずとも文句なしに面白いので一読をお薦めします。私はこち亀の連載開始当初からの読者で現在でもジャンプの連載を纏めたコミックだけは出る度に買っています。1巻から全て手元に揃えて置いていましたが100巻を越した頃に置き場所の問題から処分してしまい、現在は特に気に入った号だけ手元に残してあります。パワー全開のまま現在190巻まで出ている「こち亀」ですが、1952年生まれの秋本 治先生には是非まだまだ頑張っていただき300巻位まで続けられることを期待しています。最新の190巻には秋本先生が初音ミクの曲「VOICE」を聴いていてアイデアが浮かんだという、ちょっとホロっとさせられる「学びの時代の巻」という作品も収載されています。
●三輪レースに出場するための車両を入手しに両さんと中川が中古車屋に行き、最初は一般的なこのK360を見つける。
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●K360のモンスター版であるT600を置いている中古車屋が見つかり、両さんが中川の小切手500万円を使って「釣りはいらん」といって購入。
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●T600で三輪レースに出場
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●T600の前輪が外れてなくなり、こち亀らしいハチャメチャなラストに
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★オマケ(その3): 左ハンドルのマツダT600 動画
かなりコンディションのよさそうな現存車両。左ハンであること以外にも国内仕様とは細部がかなり異なるようです。巨体の外国人が乗るとクルマが更に小さく見えます。
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★1959年 マツダT600 ミッドシップ三輪 けさぶろうの兄貴 ~自動車カタログ棚から 227
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