★創業初期のトヨタから発売された車種の順序は次の通り。
①1935年(昭和10年) 11月 G1型トラック
②1936年(昭和11年) 1月 DA型バス
③1936年(昭和11年) 9月 AA型セダン
即ち、初期のトヨタは最初にトラック、次にバス、そして最後に乗用車という順序で発売した。
今回はトヨタがトラックに次ぎ2番目に発売したバスをピックアップします。
★現在のトヨタは大型トラック/バスの生産をグループ企業である日野自動車に譲り、完全に大型車の生産から完全に撤退しているが、1970年代までは大型バスも独自に生産していた。
リアエンジンバスの生産もされたが、今回はトヨタ製ボンネットバスについて。その変遷はバス用低床シャシーを持つことを除き、外観・機構共に本シリーズ第202回記事などでご紹介したトラックに概ね準じたものであった。特に1951年(昭和26年)から1964年(昭和39年)まで生産された世代の丸味を帯びたフロント・デザインは日本のボンネットバスの中でも抜きん出て愛らしい1台だった。
【トヨタ バスの変遷】 (トヨタ自動車75年史より)
(1) 1936年1月~1940年9月: DA型バス
(2) 1939年6月~1941年9月: DB型バス
(3) 1942年9月~1944年6月: KB型バス(トラックシャシー)
(4) 1944年6月~1945年4月: KC型バス(トラックシャシー)
(5) 1949年9月~1951年5月: FL型バス
(6) 1949年10月~1951年5月: BL型バス
(7) 1951年6月~1954年3月: BY型バス
(8) 1951年8月~1954年3月: FY型バス
(9) 1954年5月~1955年7月: BB型バス
(10) 1954年3月~1973年4月: FB型バス(FB・FB60・FB70・FB80・FB90・FB100)
(11) 1957年8月~1975年7月: DB系バス(DB70・DB80・DB90・DB100)
以上の変遷の中で(1)から(4)は戦前・戦中型、(5)のFL型と(6)のBL型は戦前の設計をベースに低床バスシャシーとしたもので、外観のイメージも戦前のままであった。真の戦後型は1951年のBY型/FY型からであり、BX/FX型トラックに準じた外観・設計を持っていた。型式名の1文字目はB型エンジン(75ps)およびF型エンジン(95ps)を示すもの。アンダーパワーなB型エンジン搭載車は1955年までで生産を終え、その後のガソリンエンジンはF型のみとなる。(11)のDB系はトヨタがバス市場でのシェアを伸ばすために、他社に遅れながらもディーゼルエンジンを搭載したもので末期の販売はディーゼル車が中心となる。
トラック同様に1964年(昭和39年)に100系にフルモデルチェンジし内外観を一新した。
●1952年トヨタBY型 関東バス (富士重工業所蔵写真)
【主要スペック】 1953年 トヨタバスFY型 (刈谷Y3AR型ボディ)
全長8110mm・全幅2410mm・全高2700mm・ホイールベース4370mm・車重4600kg・リアオーバーハング2650mm・FR・F型直列6気筒OHV3870ccガソリンエンジン・最高出力95ps/3000rpm・最大トルク24kgm・変速機4速MT・乗車定員51名・電装系6V・燃費5.2km/L・最高速度79km/h
※トヨタのバスのカタログは相当な種類が発行されていると推測されますが、残念ながら手元のカタログ棚には極く極く一部しかありません。いすゞなどに比べると販売数も少なかったせいかカタログも残っているものは少ないようです。発行時期は殆どのカタログに記載がないためカタログナンバーや型式からの推定です(誤り等、御指摘ください)。
※トヨタ同様の事情から現在はバスの生産から撤退している日産のボンネットバスについては、本シリーズ第96回記事をご参照ください。
●1953年 トヨタバスFY型 本カタログ (縦24.5×横26cm・12頁)
トヨタカタログNo.176
中頁から
室内
オープンルーフの観光バス
ヤナセ高浜製の超高級なサロンバス
サロンバスの室内: 前後2室に分かれており、フロントには冷蔵庫も
バス専用シャシー
F型95馬力エンジン
図面: 刈谷車体(現トヨタ車体)製
図面: 富士重工製
裏面スペック
●1954年 トヨタバスFB型 本カタログ (A4判・12頁)
トヨタカタログNo.266。ホイールベース4370mm。3878cc105HPエンジン搭載。トラックに準じてフロントグリル変更。
●1958年 トヨタディーゼルバス 本カタログ (縦17×横33.5cm・12頁)
トヨタカタログNo.513。クラウンRSDデビューカタログのような横長大判カタログ。DB70(ホイールベース4900mm)とDB75(ホイールベース4370mm)掲載。5890cc110HPエンジン搭載。フロントグリル変更。フロントグリル2度目の変更。
●1959年 トヨタディーゼルバス 本カタログ (A4判・8頁)
トヨタカタログNo.551。DB80(ホイールベース4900mm)とDB85(ホイールベース4370mm)掲載。6494cc130HPエンジン搭載。表紙のDBの絵は58年のものを使い回し背景を追加している。
●1960年 トヨタバスFB80型 専用カタログ (A4判・2つ折4面)
トヨタカタログNo.622。ホイールベース4370mm。3878cc125ps。フロントグリル3度目の変更。
●1960年 トヨタディーゼルバス 専用カタログ (縦20×横30cm・3つ折6面)
トヨタカタログNo.623。DB90(ホイールベース4370mm)・DB92(ホイールベース4900mm)・DB95(ホイールベース5170mm)の3型式掲載。2D型6494cc130psエンジン搭載。
●1961年 トヨタバスFB80型 専用カタログ (縦20×横28cm・3つ折6面)
トヨタカタログNo.708。ホイールベース4370mm。3878cc130ps。
●1961年 トヨタディーゼルバス 専用カタログ (縦28×横21cm・3つ折6面)
トヨタカタログNo.675。1980年代に書籍の表紙ともなった有名なカタログ。DB90(ホイールベース4370mm)・DB92(ホイールベース4900mm)・DB95(ホイールベース5170mm)の3型式掲載。2D型6494cc130psエンジン搭載。
中頁から: 有楽町時代の都庁前バス停の写真。写っているタクシーは初代後期のクラウン。
●1963年 トヨタディーゼルバス 専用カタログ (縦20×横28cm・3つ折6面)
トヨタカタログNo.C-32。カタログNoが従来の3桁ではなくなった。DB90(ホイールベース4370mm)・DB92(ホイールベース4900mm)・DB95(ホイールベース5170mm)の3型式掲載。2D型6494cc130psエンジン搭載。
中頁から: DB90系の最終型はミラー取付け位置がフロントウインド下からフェンダー上に移った。
●1965年 トヨタバス カタログ (A4判・3つ折6面)
トヨタカタログNo.10025。トラックに準じてフルモデルチェンジ。ガソリン仕様車専用カタログ。ボンネット型のFB100とキャブオーバー型(COE)のFB100C掲載。
●1969年 トヨタディーゼルバス 総合カタログ (A4判・12頁+スペック表)
リアエンジンバスDR系とボンネットバスDB100(ホイールベース4370mm)・DB102(ホイールベース4800mm)・DB105(ホイールベース5170mm)、キャブオーバーバスDB105C型掲載。
中頁から
DB105型
DB102型・DB100型
室内: 古いバスや電車の木貼りの床面は何ともそそります。
★オマケ(その1): 京商1/80スケール 1963年 トヨタボンネットバスFB80型「トヨタ博物館保存車」
2000年発売製品。コールドキャスト製。当時定価3800円+税。インドネシアの警察で使用されていた車両を復元したトヨタ博物館保存車のモデル。国内の現存車ではない車両の復元という事実が現存車両の少なさを物語っている。トヨタのボンネットバスのミニチュアは現在に至るまでこれのみ?日本型鉄道模型のレイアウトに使える1/80スケール。
★オマケ(その2): 集英社の絵本「たのしいのりもの~ばすでえんそく」 (B5判・12頁)
当時定価35円。集英社発行。絵: 安井小弥太 画伯。表紙のトヨタボンネットバスは1953年のFY型のカタログに掲載されたオープンルーフの観光バス仕様が比較的忠実に描かれている。1954年にマイナーチェンジする前の初期型フロントグリル。子供達がトヨタのバスに乗って遠足に出かけるという物語的な内容の絵本。
中頁から
都電6000形と渡る橋はどこでしょうか
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★1950~1960年代のトヨタボンネットバス キュートなバス ~自動車カタログ棚から 208
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