★シボレー・コルベアというと、初代ウルトラマンの科学特捜隊専用車を思い出す。
1966年(昭和41年)7月17日から1967年(昭和42年)4月9日まで毎週日曜夜7時にTBS系で全39話が放送された初代ウルトラマンに熱中した世代(47年前の放送なので現在50歳前後以上か)ならこのクルマの顔や形に見覚えがあるに違いない。初代ウルトラマンは視聴率30%から40%台という怪物番組だったので、当時子供だった世代で見ていない人は少ないだろう。カラー番組だったが、カラーテレビ普及前の時代だったのでリアルタイムにカラーで見た人は少ないはず。私も当時は勿論白黒テレビで見た。
★科特隊専用車は、初代ウルトラマンを監督した円谷 一(特撮の神様・円谷英二の息子:1933年4月23日-1973年2月9日:脳溢血のため39歳で早世)が愛用していたコルベアに科特隊の星形マークのステッカーなどを貼り付けた車両だったと言われる。コルベアは当時としては斬新なデザインのクルマだったので、いわば即席に仕立てられた劇中車であっても違和感はなかった。カッコイイ!と思ったものだ。1967年(昭和42年)10月から放送されたウルトラセブンでは1958年クライスラーインペリアルを大幅にモデファイした車両「ポインター」が使用されたが、1971年(昭和46年)放送の「帰ってきたウルトラマン」ではマツダ・コスモスポーツにやはりステッカーを貼って即席に造られた「MATカー」が使用されている。
●ウルトラマン放送終了後に放置されたコルベア科特隊専用車の画像。タイヤはパンクし悲惨な姿となりつつある。フロントデザインからコルベア第一世代末期の1964年式と判る。初代ウルトラマンの撮影/放送の時点ではまだ1~2年落ち位の新車だ。
★vwビートルを始めとする欧州車の対米輸出が好調であったことから、アメリカ自動車メーカー・ビッグ3は当時恐竜のように巨大だったアメリカ車のサイズをダウンしたコンパクトカーを1960年(昭和35年)に一斉にデビューさせた。即ち、フォードのファルコン、プルムスのバリアント、そしてこのシボレー・コルベアである。サイズダウンしただけで極めて凡庸なファルコン、デザイン的な冒険は見られたものの常識的な設計のバリアントに対して、コルベアはVWビートルやポルシェ356のような空冷水平対向のリアエンジンでデザイン的にも独特な個性と美しさを持って登場した。当初、スタンダード500、デラックス700の4ドアセダンのみだったが、2ドアクラブクーペ、コンバーチブル、ステーションワゴン、VWタイプⅡのような1ボックスワゴンも加えられると共にエンジンも年々パワーアップされた。空冷リアエンジンと4速マニュアルトランスミッションによるアメ車では珍しいスポーツライクな味わいからアメリカ本国では「プアマンズ・ポルシェ(poor man's porsche)」とも揶揄されたが、1960年から1965年までの初めの6年間に年20~30万台が売れた。1965年に第二世代に代わった後1969年まで生産されて終焉を迎えたが、1960年のデビューからの累計で178万6243台が売れた1960年代GMのヒット車となった。リアエンジンに伴う操縦性の問題をラルフ・ネーダー(Ralph Nader; 1934年2月27日-)の著書で叩かれたことが原因で1965年以降の第二世代の売上が激減したと言われるが、コルベアが欠陥車であった訳ではなく単にアメリカ人がリアエンジン車の操縦性について無知であったというだけの話だったようだ。なお、コルベアはアメリカではコンパクトカーとはいえ、日本では当時のクラウン、セドリックのサイズに相当する中型車だった。
【主要スペック】 1960年 シボレーコルベア (Chevrolet Corvair)
全長4572㎜・全幅1699㎜・全高1303㎜・ホイールベース2743㎜・車重1140kg・RR・空冷水平対向6気筒OHV2287cc・最高出力96ps/4800rpm・最大トルク17.3kgm/2800rpm・4速MT・乗車定員6名・最高速135km/h
●1960年シボレーコルベア&インパラ カタログ(横26×縦21cm・4つ折・日本語版)
大阪西淀川区の豊国自動車で配布された日本語版カタログでコルベアとインパラの2車だけが掲載されている。
●1960年シボレーコルベア カタログ(横27×縦18cm・英文8頁)
中に1959GMの印字があるので、発行は1959年秋口と思われる。薄く判型も小さいのでこれは簡易カタログかもしれない。ボディのウエストラインをメッキのモールで囲んだデザイン・モチーフは、日本では後のプリンスグロリア(S40系)や初代マツダ・ファミリアが踏襲した。
※中頁から
リアエンジンであるため、トランクはフロントに。
フラット6エンジン
※裏面スペック
●1961年シボレーコルベア カタログ
残念ながら、この年のカタログは手元のカタログ棚にありませんでした。
●1962年シボレーコルベア カタログ(横28×縦18cm・英文12頁)
プアマンズ・ポルシェと言われたスタイリッシュな2ドアクラブクーペが加わった。中頁を見るとVWのタイプⅡに相当するような1ボックスワゴン「グリーンブライア」も追加されている。
※中頁から
ワンボックスタイプのワゴンを追加
●1963年シボレーコルベア カタログ(横22×縦22cm・英文12頁)
フロントのデザインは毎年微妙に変えられている。
※中頁から
ダッシュボードは左右ハンドルが簡単に造り替えられる左右対称デザイン
コンバーチブルもラインナップされた。
●1964年シボレーコルベア カタログ(横27×縦14cm・英文12頁)
ウルトラマンの科学特捜隊専用車はこのフロントデザイン。
※中頁から
●1965年シボレーコルベア カタログ(横28×縦22cm・英文16頁)
デザインをぐっとモダンにした第二世代がデビュー。
※中頁から
●1966年シボレーコルベア カタログ(A4判・英文12頁)
※中頁から
★オマケ(その1): メーカー不詳 1/90スケール 1964年シボレーコルベア「ウルトラマン科学特捜隊専用車」
全長約5cm。コルベアの科特隊専用車仕様の当時物ミニカーやプラモデルなどは一つもなく、これは近年の製品。ポリ系素材。
★オマケ(その2): 英コーギー 1/48スケール 1960年シボレーコルベア
英国CORGI品番229。国内当時定価400円。ダイキャスト製。リアエンジンフード開閉アクション付。スケールは測ってみると1/43標準スケールより一回り小さいミニカー。リアウインドー内側にサンシェードが付いているのが謎。コルベアは当時、老舗ディンキーからも標準サイズミニカーが発売されていた。
★オマケ(その3): 一宏工業(イチコー) 1/20スケール 1960年シボレーコルベア
全長22.5cm。当時定価:地方220円。日本製のコルベアは当時このイチコーの他、バンダイ、米澤玩具、野村トーイ、マルサン商店、SSSインターナショナル商事など多くの玩具メーカーが競作していて時代の花形車だったことを反映している。バンダイでは1962年・1963年とフロントデザインを変えた年式違いまでモデル化していた。当時、コルベアの科特隊仕様モデルがどの国内メーカーからも発売されなかったことが惜しまれる。
★オマケ(その4): 1960年 シボレーコルベア・プロモーションフィルム(Chevrolet Advertising Film)
★オマケ(その5): 1966年 初代ウルトラマン主題歌
これを聴くと今でも胸キュンものです。
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★1960年 シボレー コルベア 初代ウルトラマン科特隊専用車 ~ 自動車カタログ棚から 138
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