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★1955年スズライト・セダン スズキ最初の4輪市販車 ~ 自動車カタログ棚から 253

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阪神・淡路大震災から今日で丸20年。時が過ぎるのは本当に速いものです。私はあの日、たまたま会議で神戸に出張の予定でした。勿論会議は中止となり、刻々とテレビに映し出される惨状を呆然と見ていたのがつい昨日のことのようです。もし1日早く神戸へ行くことになっていたら、あるいは私も命を落としていたかもしれません。倒壊した家の下敷きとなって「助けて、助けて、助けて」と叫ぶ人を迫り来る火からどうにも助けられなかったといった話には胸が詰まる思いです。肉親や親しい人を失くした人の悲しみは20年の時が経っても完全に癒えることはないでしょう。

さて、今日は自動車カタログ棚シリーズの第253回としてスズキが今からちょうど60年前の1955年(昭和30年)に初めて市販した軽四輪スズライトをピックアップします。
 



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★2014年(平成26年)、ハスラーのヒットで2006年以来8年ぶりに軽自動車年間販売台数トップとなったスズキの歴史は古く、1909年(明治42年)10月に鈴木道雄氏(1887年-1982年)が静岡県浜名郡天神町村で鈴木式織機製作所を創業したことに遡る。
スズキ同様に織機メーカーが前身であるトヨタの場合には豊田自動織機の創業が1926年(大正15年)11月であったので、スズキの方が創業からの歴史は17年ほど長い。
鈴木式織機製作所は1920年(大正9年)3月、資本金50万円にて鈴木式織機株式会社となり法人格を得たものの自動織機は半永久的に使用できるほど耐久性が高く買換え需要が多くは見込めないことから、戦前より自動車製造の研究を開始した。戦後、1952年(昭和27年)6月、バイクモーター「パワーフリー号」(2サイクル36cc)により自転車用補助エンジン/自動2輪の世界に参入した。当時、遠州・浜松を中心に自転車用補助エンジンは多数のメーカーにより造られたが2段変速採用などの優位性から鈴木のパワーフリー号はヒット商品となった。翌1953年(昭和28年)3月、バイクモーター「ダイヤモンドフリー号」(2サイクル60cc)を発売するや月産5000台の大ヒットとなり、スズキは昭和20年代末のバイクブームをリードした。1954年(昭和29年)6月には鈴木自動車工業株式会社に社名を変更し、翌1955年(昭和30年)10月、軽四輪乗用車「スズライト」(2サイクル360cc)の発売により四輪車製造の世界に参入した。その後、モータリゼーションの発展と共に軽自動車を中心に飛躍的に生産台数を増やし、1990年(平成2年)10月にはスズキ株式会社に改称し現在に至る。


★自動織機の製造から自動車生産への転向を推し進めたのは他ならぬ創業者である鈴木道雄氏であった。
1936年(昭和11年)には英国の小型車オースチンセブンを参考にして研究を開始し1939年(昭和14年)には数台の試作に成功した。ところが、戦局の悪化と共に鈴木式織機の工場は軍需品の生産にフル稼働することとなり、自動車生産の研究は否応なしに中止せざるを得なかったのである。
戦後、1954年(昭和29年)初め、独フォルクスワーゲン・ビートル、独ロイト、仏シトロエン2CVの3車を購入して自動車生産のための本格的な研究を開始、同年3月には具体的な図面を引き始めた。免許・税制等で特典が多く国情にも合う軽自動車を製造することを目標に設計が開始され、駆動方式はFF、エンジンは2輪で成功していた2ストロークが採用された。ボディは同じFFである独ロイトを参考にバックボーン型モノコックが採用された。設計開始半年後の1954年9月には試作1号車および2号車が完成したが、エンジン及びサスペンションはロイトをコピーしたもので未だ左ハンドルであった。翌1955年(昭和30年)4月には4輪独立懸架を採用しオリジナル設計のエンジンを搭載した右ハンドルの試作3号車が完成した。


★スズキ最初の四輪車「スズライト」は1955年(昭和30年)7月、セダンSS、ライトバンSL、ピックアップSPの3車種が運輸省の認定を受け、同年10月より「スズライトSF」として市販に移された。「スズライト」(Suzulight)とは鈴木のスズと「明るい」「軽い」の意味のライトを組み合わせた造語であり、SFはSuzuki Four Wheel Car=鈴木の四輪を略したものであった。
スズライトは空冷2ストローク360ccエンジンを搭載し、圧縮比6.8で15.1ps/3800rpmの出力を発して、セダンでは最高速度85km/hを誇った。四輪独立懸架のサスペンション、バックボーン型モノコックボディ、コラムシフトの他、国産車史上初めてFFを採用したことなど技術的なトピックも多い。当時すでにフライング・フェザー(本シリーズ第25回記事参照)、NJ号(本シリーズ第249回記事参照)、オートサンダル、テルヤンといった軽自動車が登場していたが、他車は全て2人乗りの簡便なものであったのに対してスズライト・セダンは4人乗りであり、本格的な軽自動車としてはパイオニアと言えるクルマであった。
スズライトは当初月産僅か3~4台で生産が開始され、1956年(昭和31年)2月に当面の目標であった月産30台を達成した。


★スズライトはセダン・ライトバン・ピックアップに加えて1956年にはデリバリバン(SD)も追加されたが、生産台数は4車種トータルで月20~30台というローペースであった。
僅か月産30台以下で4車種を造り分けることは非能率的であり大きな赤字を生む結果ともなり、1957年(昭和32年)5月には比較的需要の多いライトバンのみを残してセダン・ピックアップ・デリバリバンの生産は打ち切られた。セダン・ピックアップ・デリバリバンの生産期間は1955年10月~1957年5月までの僅か1年半程度であった。この間、コイルによる四輪独立サスが当時の悪路に悲鳴を上げてしまい、1956年7月生産車からは前後共に横置きリーフによる独立式に変更、デビュー当初はダットサン用の16インチが国内で入手出来る最小サイズのタイヤであったため視覚的に異様にタイヤが大きかったものを1956年11月生産車からは一回り小さな14インチ・タイヤに変更、その他、クレームの多かった風が入らない抜けないという室内換気についても改良が施された。ライトバンのみの生産に絞ってから2年余り後の1959年(昭和34年)7月には2代目スズライトTL型にバトンを渡した。


【主要スペック】 1955年 スズライトSFセダン SS型 (1955 Suzulight SF Sedan Typ.SS)
全長2998㎜・全幅1298㎜・全高1400㎜・ホイールベース2000㎜・車重520kg・FF・SJKⅡ型空冷2ストローク2気筒360cc・最高出力15.1ps/3800rpm・最大トルク3.2kgm/2800rpm・変速機3速コラムMT・燃料:混合(ガソリン20対オイル1)・燃費25km/L・電装系6V・タイヤサイズ4.00×16・乗車定員4名・最高速度85km/h・販売価格45万円(浜松裸渡し)


●1955年スズライトSFセダンのロードテスト風景 (誠文堂新光社「自動車のアルバム」1956年版より)
横線グリルに上側支点ワイパーの初期型。場所は浜松だろうか。
ロードテスト1955年


●1956年スズライトSFセダン 広報写真 (三栄書房モーターファン臨時増刊「自動車図鑑」1956年版より)
左右2分割の縦線グリルに下側支点ワイパーとなった生産型。高貴な黒をイメージカラーとしていたようだ。
広報写真1956年



●1955年10月 スズライト カタログ (A4判・表裏1枚)
スズキ・カタログNo:印字なし。最初期のスズライトのカタログはこの1枚物リーフレットのみ(?)。「日本国民の足スズライトが出来ました」のコピーは通産省が1955年5月に出した国民車構想(国民車育成要綱案)を受けてのものと思われる。横線のフロントグリル、狭いフロントウインド、上支点のワイパー、「SUZU」の4文字のみのフロントロゴ、のっぺりしたバンパーなどが特徴的なこの初期型については試作車と位置付ける文献もあり殆ど市販はされていないようだ。この初期型の現存車両は確認されていない。SJKのロゴマークは鈴木自動車工業のイニシャル。
55表紙

セダン
55(1)セダン

【裏面】ピックアップ&ライトバン
55(2)ピックアップ&バン

2名乗り200kg積みピックアップ
55(3)ピックアップ

補助席付3名乗り150kg積みライトバン
55(4)ライトバン

スペック
55(5)スペック



●1956年4月 スズライト 簡易カタログ (A4判・片面印刷)
スズキ・カタログNo.137。デリバリバンが追加され、計4種類となった。なだらかに落ちるルーフラインを持ったライトバンはリアゲート付のリフトバック・クーペのように見える。ピックアップとデリバリバンの現存車両は確認されていないようだ。簡易カタログといってもペラペラの薄い紙に片面だけ印刷されたフライヤー(チラシ)。
564チラシ表紙

セダン&ライトバン
564チラシ(1)セダン&バン

ピックアップ&デリバリバン
564チラシ(2)ピック&デリバリ



●1956年4月 スズライト 本カタログ (A4判・2つ折4面)
スズキ・カタログNo.138。上掲の簡易カタログと連番のカタログ。イラストのスズライトと写真の女性を組み合わせた表紙が味わい深い。「スクーター免許で誰でも手軽るに乗れます・・・・」のコピーがあるものの、初任給1万円程度の時代にセダン45万円では誰でも手軽に買えるシロモノではなかった。
564本表紙

【中面から】
564(1)

564(2)

セダン
564(3)セダンアップ

ライトバン
564(4)ライトバン

デリバリバン
564(5)デリバリバン

ライトバン荷物室
564(6)ライトバン荷物室

デリバリバン荷物室。16インチの巨大なスペアに占領されて荷物は大して入らない。
564(7)デリバリバン荷物室

2サイクル360ccエンジン
564(8)2サイクルエンジン

運転席。運転している男性が宇宙人のような雰囲気。
564(9)運転席

エンジンルーム
564(10)エンジンルーム

ピックアップの荷台
564(11)ピックアップ荷台

裏面:ピックアップ・スペックほか
564(12)裏面ピックアップ他

ピックアップ
564(13)ピックアップ拡大

7つの特徴
564(14)7つの特徴

浜松市外高塚の鈴木自動車全景: 資本金5億円、従業員1000名。
564(15)鈴木全景5億円

スペック: タイヤサイズ400×16を横2本棒で消して450×14の印字、懸架装置の前後コイルを横2本棒で消してリーフスプリングの印字がされていることから、1956年4月に印刷されたカタログに修正を加えてサスペンションとタイヤサイズ変更後の1956年11月以降に配布されたと思われる。
564(16)修正されている諸元



●1957年11月 スズライト ライトバン カタログ (縦17.5×横19.1cm・2つ折4面)
スズキ・カタログNo.157。ライトバンSL型のみの生産となった後のカタログ。
57表紙

【中面から】
フロントビュー
57(1)フロント

サイドビュー
57(2)サイドビュー

後席補助シートを助手席下に折り畳んだ状態
57(3)後席は折り畳み

後席補助シートを引き出した状態。スペアタイヤもあり3名乗車で荷物を積むのは苦しかっただろう。
57(4)補助席出しスペア有

裏面: 図面・スペック等
57(5)裏面図面スペック

図面アップ
57(6)図面アップ



●1958年3月 スズライト ライトバン フライヤー (縦17.6×横36.7cm・片面印刷)
スズキ・カタログNo.166。上掲の1957年11月版カタログの中面を若干レイアウト修正してチラシとしたもの。
58年チラシ



●1959年 スズライト ライトバン カタログ (縦19.7×横21cm・2つ折4面)
スズキ・カタログNo:印字なし。SJKのロゴが廃止されて現在よく知られるスズキのロゴマークが入った最初のカタログ。この「S」を図案化したロゴマークは新幹線700系の車両デザインでも有名な手銭正道氏(1935年-2005年)によるもので、300点を超える候補作の中から1958年10月に制定されたもの。ブルーのツートンカラーが美しいモデル末期のSL型。初期のライトバンでは39万円だった価格が45万円に上がっている。カタログのロゴマークは新しくなったが、センターホイルキャップの赤字ロゴはSJKのまま。
59年表紙

このスズライト初代最終型ではフロント左右ウインカーが白からオレンジに変更された。クロームメッキのセンターホイルキャップに刻まれた赤い文字は旧ロゴのSJKのまま。
59アップ

【中面から】
59年(1)

滑らかに丸い弧を描いたルーフラインはなかなか美しい。
59年(2)ルーフラインは美しい

特徴
59年(3)特徴

裏面:図面・スペック等
59年(4)裏:図面スペック等

鈴木自動車全景: 上掲の1956年4月版と比べると資本金は5億円から1.5倍の7億5000万円に増加。
59年(5)鈴木全景7億半

スペック: 裏面にも新ロゴマーク
59年(6)スペック裏面新ロゴ





★オマケ(その1): スズライト劇場
スズキ歴史館(JR東海道線 高塚駅下車徒歩10分・月曜休館)で上映されているスズライト劇場。初代スズライトはスクラッチビルドの個人製作品を除き現在に至るまで模型・ミニカー等の立体造形物は造られていない。






★オマケ(その2): 1955年生まれの有名人
オマケが一つではちょっと寂しいということで、スズライトと同じ1955年生まれの有名人をピックアップしてみました。お元気であれば今年の誕生日で還暦となられる方々です。サラリーマンなら定年退職。1955年生まれは案外ビッグネームが多いような気がします。あえて名前は載せませんが、ジョン・レノンを撃った殺人犯も1955年生まれです。

【男性】
ビル ゲイツ(マイクロソフト創業者)・スティーブ ジョブズ(アップル創業者)・アラン プロスト(レーシングドライバー)・ヴァン ヘイレン(ミュージシャン)・ケビン コスナー(俳優)・明石家さんま(タレント)・所ジョージ(タレント)・Char(音楽家・ギタリスト)・松山千春(音楽家・歌手)・世良公則(音楽家・歌手)・郷ひろみ(歌手)・佐野 史郎(俳優)・ラサール石井(タレント)・春風亭小朝(落語家)・鳥山 明(漫画家)・掛布雅之(野球)・江川 卓(野球)

【女性】
ニーナ ハーゲン(音楽家・歌手)・矢野顕子(音楽家・歌手)・竹内まりや(音楽家・歌手)・烏丸せつこ(女優)・坂口良子(女優)・太田裕美(歌手)・伊藤 蘭(元キャンディーズ)・アグネス チャン(歌手)・麻丘めぐみ(歌手)・上沼 恵美子(タレント)・くらもち ふさこ(漫画家)


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