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Channel: ポルシェ356Aカレラ
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★1967年 フォルクスワーゲン1600TL 薄命のビートル後継車 ~自動車カタログから148

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フォルクスワーゲンは1938年のKDFに始まるビートルの世代交代を目的として1961年(昭和36年)8月にVW1500をデビューさせた。
販売当時はVW1500、後にはVW1600と単に排気量から取られた車名であったが、現在では一般にビートルをVWタイプⅠ、ビートルベースの商用ワンボックス/トラックをVWタイプⅡ、その後にデビューした車種ということでVWタイプⅢと呼ばれる第三のワーゲンである。
VWタイプⅢは、基本的にビートルを応用して造られた。ビートルと同じ2400mmのホイールベースおよび空冷リアエンジンに嫌味のないプレーンなスタイルの全く新しいボディを載せ、室内やトランクもビートルより遥かに広く設計された新世代モデルであった。
エンジン補機類のレイアウト変更によりエンジン全高がビートルより遥かに低く抑えられ「パンケーキ・エンジン」の異名を取ったほどコンパクトなエンジンをリアに搭載した。そのエンジン上部を蓋で塞ぎ、その上の空間をトランクとした上、フロントにも本来のトランクを持つため、リアエンジン車特有の欠点であるラゲッジスペース不足という問題を解消して、フロントエンジン車に対する市場競争力を高めた。

★VWタイプⅢの完成度は世界水準以上であったが、当時の1500ccクラスの小型乗用車では少数派となっていた騒音問題等の残る空冷リアエンジンであったことや2ドアボディのみで汎用性の高い4ドアモデルを持たなかったことなどがセールス上のネックとなった。
当初の2ドアセダン以外に1962年(昭和37年)1月にワゴンボディ(ヴァリアント)、1965年(昭和40年)8月にはファーストバックボディ(TL)が追加投入されたものの、長年の実績で市場から根強い支持を得ていたビートルに取って代わる存在になることは出来ずビートルより早く1973年(昭和48年)7月に前輪駆動・水冷エンジンのVWパサートのデビューと入れ替えにタイプⅢは生産中止となった。
タイプⅢはビートルに代わり得なかったVWの失敗作とも言われるが、12年間に累計254万2382台が生産されており(内ファーストバックは約60万台)、それはVW以外のメーカーの製品、例えば同時代の日本車であったならば世界的な大ヒットといえるレベルの販売実績を収めたクルマだった。

★VWタイプⅢは1961年(昭和36年)8月のVW1500のデビューからちょうど2年後の1963年(昭和38年)8月にエンジンを45psから54psにパワーアップしたVW1500Sが市場投入され、更に2年後の1965年(昭和40年)8月に排気量を100ccアップしクーペボディを持つVW1600TLファーストバックがバリエーションに加えられた。1600TLはセダンとワゴン(ヴァリアント)の中間的なプロポーションのテールにかけて非常になだらかで美しい曲線を持ったボディを身に纏って登場した。
美しいファーストバック・ボディにも係わらず、ルーフからリアにかけての秀逸なデザイン処理により後席の居住性がセダンと同等で全く損なわれていないのが大きな特徴でもあった。

★その後のVWタイプⅢの主な変遷は以下の通り(全ボディタイプ共通)。
・1966年(昭和41年)8月: 電装系を6Vから12V化
・1967年(昭和42年)8月: オートマチック・トランスミッション追加
・1968年(昭和43年)8月: 世界初の電子制御燃料噴射エンジンをオプション追加
・1969年(昭和44年)8月: フロントを120mm延長(フロントラゲッジスペース拡大)
・1970年(昭和45年)8月: 強制換気追加・リアシートを折り畳み式に変更
・1971年(昭和46年)8月: ワイパーおよびウインドウォッシャーレバーをコラム操作に変更

★日本へは梁瀬(ヤナセ)を通して1966年(昭和41年)より輸入されたが、VWタイプⅢの国内輸入台数の経緯は以下の通り(全ボディタイプ合計)。
・1966年(昭和41年)=1294台
・1967年(昭和42年)=1086台
・1968年(昭和43年)=783台
・1969年(昭和44年)=831台
・1970年(昭和45年)=558台
・1971年(昭和46年)=660台
・1972年(昭和47年)=569台
・1973年(昭和48年)=474台

1966年~1973年に合計6255台のVWタイプⅢが日本に正規輸入されており、これは同時期に年間2000~4000台前後も輸入されたVWビートルほどではないにしても当時の輸入車としては少なくはない。しかし、40年を経過した現在でも日本で生き残っているタイプⅢのヤナセ・ディーラー車の数はそれ程多くはなさそうだ。


【主要スペック】 1967年 フォルクスワーゲン1600TL ファーストバック
全長4224㎜・全幅1605㎜・全高1476㎜・ホイールベース2400㎜・車重913kg・RR・空冷水平対向4気筒1584cc・最高出力65ps/4600rpm・最大トルク12.0kgm/2800rpm・変速機4速MT・前輪ディスクブレーキ・乗車定員5名・燃費12km/L・最高速135km/h・ヤナセ国内輸入価格127万8000円

●1967年 フォルクスワーゲン1600TL ファーストバック 本カタログ(A4判・日本語24頁)
梁瀬発行の日本語版。表紙は1600TLファーストバック(表記はファストバックセダン)だが、後半8頁はワゴン(ヴァリアント)が掲載されている変則カタログ。
$1959PORSCHE356Aのブログ-表紙

※中頁から
1600TLは後姿が綺麗なバックシャン
$1959PORSCHE356Aのブログ-(1)バックシャン
顔も可愛い
$1959PORSCHE356Aのブログ-(2)フロント
$1959PORSCHE356Aのブログ-(3)室内
計器盤はスピードメーター、燃料計、時計のみとシンプル
$1959PORSCHE356Aのブログ-(4)メータースピード時計燃料
シートは同時代の国産高級車より遥かに上質にみえる
$1959PORSCHE356Aのブログ-(5)シート上質
白線が引かれた部分が前後のラゲッジスペース
$1959PORSCHE356Aのブログ-(6)ラゲッジスペース
RRシャシー
$1959PORSCHE356Aのブログ-(7)RRシャシー
裏面スペック
$1959PORSCHE356Aのブログ-(8)裏面スペック



★オマケ(その1): 英マッチボックス1/61スケール 1966年フォルクスワーゲン1600TLファーストバック
当時国内定価150円。品番67。ダイキャスト製。全長7cm。私が小2位の時に遊んだミニカーなので遊び傷が多数。ホットホイールの影響で1970年にマッチボックスがスピードホイール(スーパーファスト)になってからは紫メタリックに色を替えて売られていた。
$1959PORSCHE356Aのブログ-マッチボックス(1)
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★オマケ(その2): 英ディンキー 1/43スケール 1966年フォルクスワーゲン1600TLファーストバック
当時国内定価:調査中。品番163。ダイキャスト製。全長10cm。リアのラインが実車より妙にずんぐりしているのが難点。1960年代の欧州製ミニカーに流行ったダイヤカットのヘッドライトの他、ドア、フロントトランク、リアの全てが開閉するギミック付。フロントトランクの中にスペアタイヤが表現されているのが魅力的。リアエンジンがトランク下にモールドされているのも正確。
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オマケ1のマッチボックスとの並び
$1959PORSCHE356Aのブログ-ディンキー(4)マッチとの比較


★オマケ(その3): ダイヤペット 1/40スケール 1966年フォルクスワーゲン1600TLファーストバック
当時定価550円。米澤玩具ダイヤペット品番157。アンチモニー製。全長10.5cm。細部の表現、プロポーション共にこのダイヤペットのTLが個人的にはベストだと思う。大盛屋から引き継いだアンダーメッキでバンパーや窓枠などを表現する手法がこのミニカーを実感的かつ魅力的なものにしている。当時、日本製の1600TLは矢野満(ヤノマン)や一宏(イチコー)からも出来の良いモデル玩具が発売されていた。
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